高校時代から、「小説」を書き始め、授業中に回し読みをして貰っていましたが、 全国誌への初投稿が特選に選ばれたのです。 |
@nkouの初投稿が「特選」に
A6版 160ページ 毎月 1回発行 定価 80円
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千羽の折鶴
トミー、千羽鶴ありがとう。
大正時代に造られたという欄干のない、石材をならべた小さな橋に腰かけて、四つの足をブラブラさせながら僕たちは話しこんだっけ。そして「これ、なんだかわかる?」その可愛い目を月の光に輝かせながら、君は風呂敷包みを目の高さまであげて、僕にさわらせたな。
ここでトミーはその頃のことを思い出したのか、言葉を切って僕の方を見た。「それからはアナタの成人式までに折りあげようと思って折ってきたの。アナタにあげるという目的ができたので、あと四百羽は楽しかったわ。一羽一羽をアナタのことを思って折ってきたのよ。」君はいたずらっぽく笑って僕の方を見たっけ。
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「ほう、だいぶ口もうまくなったな。それで僕にくれた方が、その八月以後のだといいたいのだろう」「そう先に言われちゃ、うちの言い分がなくなるわ」笑い合いながら、僕達はまた、あきることなく去年の八月のことを思い出しては話し続けたね。
君は、僕がおもいきって手紙を渡すまでは僕のこころに気ずいていなかったという。君が鶴を折り始めたよりも早く、ひそかに想いをよせていた僕は、君のことが思われる時小さなノートに話しかけていた。そしてこのささやかな君との交流も一年を過ぎ、ノートも二冊目になった時、僕はこのノートを君に見てもらおうと決心したんだ。
二日後の約束の夜、僕はとてもおちつかなかった。正直に言うと、石橋の上をカラコロと下駄の音をたてて、行ったり来たりしていたんだ。やがておぼろげな月の光に、君の清楚な白シャツが見えた時、僕は悪いことをしたみたいで、じっとあの橋のたもとに立ったまま君を迎えたっけ。
そのオリヅルを僕の部屋にはりめぐらしていたら、おフクロの奴「それ、どうしたんだい?」と尋ねやがった。ニヤニヤして答えない僕に、「まァ、この子ったら自分ばかり喜んで…」。得意の横目にらみはおフクロの機嫌が良い時なんだというぐらい、オレだってちゃーんと知っているんだ。おフクロが階段を降りていってから、この手紙書いたんだ。
ではまたね、さょうなら
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