すだち文学賞 特 集

相知すだち文学賞 募集結果 概要

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  1. 主催・後援・協賛
    • 主催 … 相知町屋根のない博物館
    • 後援 … 相知町、相知郵便局

  2. 募集期間
    • 平成9年11月14日〜平成10年1月31日まで(消印有効)

  3. 募集の広報
    • 新聞 朝日新聞(全国版:青鉛筆)、毎日新聞(全国版:雑記帳)
      西日本新聞、佐賀新聞(合計3回。うち1回は論説)
      読売新聞、産経新聞
    • ラジオ 山形放送、NBC佐賀
    • 雑誌 「公募ガイド」(1月号、2月号)、「チャレンジ公募」(2月号 )、「J・one」(1月号)

  4. 応募結果 (総数1,298通。この他に差出人不明5通あり)
    • 都道府県別 (順位、都道府県名、応募枚数)
        
    • 1 東京都 158 … 2 大阪府 94 … 3 佐賀県 78 … 4 神奈川県 77 … 5 千葉県 70
      6 福岡県 68 … 7 埼玉県 59 … 8 兵庫県 56 … 9 愛知県 54 … 10北海道 46
      以下 省略 … ドイツ からの応募が 1点ありました

  5. 審査結果 2月8日  第1次審査(町福祉センター視聴覚室)
      主催者、協賛者、後援者及び町文化連盟 総勢16人で
        1,298通の応募作品の中から、110通に絞り込み
    2月22日 最終審査(町立図書館会議室)     審査委員5名で 最終審査

    受賞者
         

    ○相知すだち文学賞大賞(1点) 賞状及び賞金3万円
          「巣立ちの予感」    仁平井清次さん(67) 東京都杉並区
         

    ○相知すだち文学賞優秀賞(2点)賞状及び賞金1万円
          「父母の決断」     甕岡裕美子さん(39) 東京都中野区
          「時の流れに苦笑い」  安達光幸さん(45) 埼玉県所沢市
         

    ○佳  作 (10点) 賞状及び賞品(すだち製品)

    「1万メートルのさようなら」 井川彦造さん(21) 沖縄県中城村
          「1人だけの卒業式」   奥野光正さん(38) 宮城県亘理町
          「僧侶への巣立ち」   河野益雄さん(73) 長崎県佐世保市
          「巣立ちそれは成長の喜び」志佐栄子さん(61) 佐賀県厳木町
          「短歌」        上 紀男さん(50) 東京都三鷹市
          「父のひとこと」     長尾 憲さん(43) 埼玉県上福岡市
          「川柳」        中野清治さん(47) 兵庫県川西市
          「川柳」        中村吉男さん(65) 北海道江別市
          「茶封筒」       堀籠美智子さん(47) 宮城県仙台市
          「絵手紙」       望月紀江さん(28) 東京都練馬区

  6. 入選作品

    上 さん の 短歌
           明日の朝 嫁ぐ娘が夜の更けて 部屋を清むる 掃除機の音
         

    中野さん の 川柳
           あれこれと 荷物を持つと 巣立てない
          

    中村さん の 川柳
           定年後 妻から巣立ち ままならず

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    ○相知すだち文学賞大賞
          「巣立ちの予感」 仁平井清次さん(東京都杉並区)の作品

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    年の離れた姉が嫁ぐと僕は母と二人きりの家庭になった。甘えてべったりだった
    その母が結核で緊急入院し8才の僕は叔母の家に引き取られる事になった。
    母を思 い出しては泣いてばかりいる僕には叔母達も手を焼いたようだった。

     「お母さんに一度会っとこうね」夏休みに入ったある日叔母から声をかけられて
    僕は嬉しくて小躍りしたのを覚えている。駅を下りて白茶けた埃っぽい夏道を歩い
    て行くと長い塀の続く病院があった。消毒の匂いの立ちこめる病室の奥に痩せてし
    まった母がいた。「よく来たね」かすれて苦しそうな声だったが微笑みかける母に
    僕は黙っていた。母に手招きされて近寄ると筋ばった手が伸びてきて僕は引き寄せ
    られた。抱きかかえている母の手は病人と思えぬ力強さがあった。
    僕の頭を静かに 撫でてくれる感触がたまらない心地よさだった。

    母といる時間はそう長くなかった。「今日はこれぐらいにして又来ようね」叔母に
    促されて母から離れる時僕は何故かもう母に二度と会えないのを幼心に直感していた
    気がする。病室を出るのに不思議にためらいはなく振り返る事もしなかった。
    母と会えて気持ちが吹っ切れたせいで悲しみは消えていた。数日後母の死を伝えら
    れても涙は出なかった。

    今思い返してみると母との永遠の別れを予感したときが私の幼児期への決別であ
    り少年への巣立ちだった。「戦争なんだけど戦争じゃあないから支那事変って言うん
    だってさ」友とそんな会話をしていた遠い日の記憶である。

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    「絵手紙」入選作品  望月紀江さん(東京都練馬区)の作品
     

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    詳しくは「相知町屋根のない博物館」 のページをご覧ください
          

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    … と 言うことで すだち文学賞 特集でした

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