今でもなお様々な分野、表現媒体を使って彼等の活躍を描いた作品が発表され 続けている新撰組。幕末〜維新を駆け抜けた群雄伝として今でも多くの人々から 愛され、その心を捕らえつづけています。彼等を描いた作品として司馬遼太郎氏 作の「燃えよ剣」が有名ですが、最近でも映画「御法度」がその先鋭的な描写? で話題となりました。
その他にも周りを見渡せば、ゲームにマンガにと新撰組を扱った沢山あります し、特にマンガ関連では現在進行形の作品もあります。過去発表された作品群の なかでは彼等を直接的に扱った作品に限ってもかなりの数が該当するでしょうし 、ましてインスパイアされた作品となるとどれほどの数になるやら、ちょっと見 当もつきません。さすが幕末に活躍した人々の中でも1、2を争う人気だけのこ とはあります。
とまあ、こんな感じで紹介していますが、実は自分は新撰組という存在につい て一片の思い入れすらない門外漢でして、実を言うと前述した作品群も極一部を 除き、手にとったことすらありません。
と、いうかはっきり言っちまうと、自分の認識の中では新撰組という集団は、 単に時代の流れを読み切れずその力を無為に消耗した愚かな人斬り集団って印象 しかありません、…でした(過去形)
ええ、少なくともこの作品をやるまでは。
そんなわけで、長い前置きとなってしまいましたが、今回は我がお気に入りの ゲーム「行殺☆新撰組(ライアーソフト)」について少々。 既に発売されてから大分経ってる作品だし今さらって気もしますが個人的にお 気に入りな一本というわけで、ちょっとここらで私的印象をまとめてみました。
もともとこのソフトを初めて知ったのは、どなたかの紹介で訪れた開発元のWeb サイトでこの作品のOPムービーを見たのが最初でした。そのあまりのおバカで いい感じにクダラなさ加減をブレンドしたムービーがめっちゃ楽しくて気にいって しまい即座に購入を決定。そのときの印象は、あくまで気楽に楽しめるストレス 解消型のバカゲーって感じで、今まで自分がplayしたなかで例えるならば、アリ スソフトの「プロ・スチューデントG」みたいな感じかなって思ってました。
だから、正直内容についてはそれほど期待をしていたわけではなかったんです よね。これだけのハマれるおバカなOPムービーを作ったスタッフは、果たして 本編内でいったいどんなネタで楽しませてくれるんだろう的興味が一番だったよ うな気がします。
ところが実際playしてみると、これがまた思った以上に真面目に作ってあるん ですよ。いや、もちろん期待していたおバカなお気楽なネタ的部分はしっかり押 さえてあるわけですが、そこに絶妙なバランス加減で史実を織り込み、表面上は あくまでおバカでお気楽だけど、その根底にはマジが流れてる、という構成に なっていて、そのことが作品全体に思わぬ深みを与えているように感じました。
果たしてこれが意図して狙ったものなのか、それとも単なる偶然の産物なのか はわかりませんが、少なくとも史実に関してはいい加減で中途半端な取り上げ方 ではなく、キチンと資料を揃えてしっかり検討した上で作品全体に練り込んであ るなと感じましたし、実際それだけの説得力がありました。
そして、なによりも「女ばかりの新撰組」とい要素をメインに据えたエロゲー なのに、彼女たちが新撰組という立場に立っていることを誤魔化したりしないス タッフの姿勢に凄く好感が持てました。
そう、彼女たちはあくまで新撰組であり、18禁なエロ場面や不条理な展開を 内包しつつも、あくまで「返り血を浴びながら人を斬る」という日常を自分の意 思で選び取った人たちとして描かれています。特に池田屋襲撃から意気揚々と帰 還する彼女たちを描いたCGはこの事を視覚的に表す一枚としてとても印象深い ものでした。
このことがこの作品を単なるバカゲーで終わらせていない部分であり、こうい うマジな部分をきちんと押さえてあるからこそ、京都での活動に終わりを告げ、 各地を転戦しながら、それぞれのキャラとともに迎えるエンディングが、もう祭 りは終わったのだと告げる寂寥感とともにじわりと心に染みるのでしょう。 京の都で新撰組として活動していた時間、それはとても過酷な日常であった。 しかし時をおいて振り返ってみれば、それがまるで賑やかな祭りを謳歌していた かのような一番幸せな頃だったと気付く…。 そんな感傷すら感じられるエンディングを眺めながら、ああ、この作品を遊べ て良かったな、とそう素直に感じている自分がいました。
ええ、新撰組に一片の興味すらなかった自分がこういう風に感じるほど、この 作品にハマリこんでいたわけです。このことは自分自身かなりの驚きでしたけど このゲームは確かに面白かった、と、そう素直に言い切れる作品でした。
自分のお気に入りエンドは前述した「祭りのあとの寂寥感」を如実に感じさせ てくれる土方EXエンド、そして沖田と迎えるエンド(not EX)です。どちらも 史実に沿った展開(あくまで基幹部分ですが)となり、決して手放しの幸福終了 というわけではないのですが、この作品を締めるに足るエンドだと感じました。
あと、物語自体はそれほどでもなかったけど、かつて刷り込まれたご主人様に 対する絶対的精神依存からの脱却という設定と展開が興味深かったゆーこさんも かなり印象深いですね。逆の展開はいわゆる調教ものとして巷に溢れていますけ ど、かつてのご主人様からの脱却という展開は、寡聞にしてあまり見ないので、 なんだかとても新鮮でした。
でもまあ、調教モノを見慣れている自分なんかはこういう展開は新鮮でとても 興味深かったけど、さすがに一般受けはしないような気がします。なんといって も世のヒロインのほとんどは純情可憐な純粋培養型ですからね。やはり世間的な ニーズはそちらに傾いているってことなんでしょう。
と、まあ、ここまで思いつくままつらつら書いてみましたけど、こうして振り 返って読み直してみると「行殺☆新撰組」が、なんだか、どシリアスでマジ的要 素過大な感動作品みたいに見えるますねえ…。どうもこれはマズイかな。
このゲームの基本はあくまでOPムービーに代表されるようにおバカでおちゃ らけたお気楽極楽なものです。だから気楽に遊ぶのが一番だと思うんですが、気 楽に遊ぶには最大の難敵がひとつ。
実はこの作品、発表当時バグがめちゃめちゃありました。ええ、そりゃもうハ ンパじゃないくらいの数でして、自分の場合、事前に話を聞いていたものでplay 前に修正パッチを当てて遊びましたけど、それでも隣を歩いていたはずのキャラ が話している最中にいきなり入れ代わってる他、いろいろな不具合が噴出してい ました。
果たして現状でどこまでバグつぶしが行われたのか定かではないのですが、も し今後この作品に興味をもってplayされる方がいらっしゃるのなら、必ず最新版 の修正パッチを当ててからplayされることをお薦めします。
ただ、あちこちの評価を見ているとどうやらかなり人を選ぶ作品らしいので、 誰もが楽しめるわけではないということを念頭に置いといてください。
まあ、そんなわけで、今回は「行殺☆新撰組」についてでした。
参考 ・行殺☆新撰組 ・対応:Windows98,Me,2000 ・2000年4月28日発売! ・定価:8,800円(税別) ・スタッフ 企画原案・シナリオ:岩清水新一 シナリオ:睦月たたら 原画・キャラクターデザイン:八雲剣豪 音楽:九十九百太郎 ・制作販売:ライアーソフト http://www.liar.co.jp/
|