暗渠排水の歴史    

「ほんもの」が一番  

1.海外での歴史   
2.日本での歴史    
3.日本での現状    
4.そして未来へ    


1.海外での歴史 (それはそれは古くから)

 土管による暗渠排水の歴史は、紀元前18世紀の古バビロニア王朝まで遡り、国王の墓の地下排水に、土を焼いた管を使用したとのことです。

 また、ルイ・フィリップス王朝時代には、ボルド−地区で葡萄園の畑の地下に素焼の土管を埋込み、徹底的に水はけを良くする方法が発案され、品質の良い葡萄がとれる
ようになり、ワインの質が格段に向上したとあります。(週間現代 S61.11)

2.日本での歴史 ( 竹・ソダから土管へ
     (土管 約 100 年)       戦後合成樹脂管がかなり普及)

 日本では、明治17年冨田甚平 (現在の熊本県菊池郡七城町出身)
が「留井戸工法」を、明治36年「水閘土管」を考案したことに始まり、それまでは溝を掘って、竹やソダの束を埋込んで暗渠として水を集め排出していましたが、土管を使って暗渠排水を行うようになり、各地へ広がって行きました。
 そして、土管による暗渠排水が本格化したのは、戦中から戦後にかけて食糧増産のための農地整備が行われた頃で、土管による暗渠排水が全国各地で行われるようになり食糧増産に大きく寄与しました。
 また昭和30年後半から40年代前半にかけては、住宅地整備工事で家庭からの排水処理のために、たくさんの土管が使用され、新興都市建設に大きく貢献しました。

 しかし、昭和40年半ば頃からは塩化ビニ−ルパイプなどの石油化学製品が出現し、各方面で使用されるようになりました。その後も、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの化学物質を使った製品が次々と製造され、高度成長期の象徴として様々な方面で脚光を浴びました。暗渠排水の資材も、80年以上の実績を持つ土管に代わり、価格が安い、工事が簡単であるという理由から、合成樹脂管がかなりの地域で使用されるようになりました。


3.日本での現状
 (再評価され土管が
                   ふたたび主役へ)


 ところが、合成樹脂管を使った暗渠排水では、当初から排水不良が頻発、その機能、耐久性を疑 問視する一方で、次々と送り出される新製品に戸惑いながら、手軽で、安価という理由で使用さ れ続けてきました。その結果、 「暗渠排水は効果がない、工事してもすぐ詰まる」といった捉え方 をする農家の方々が増えてきました。そのうえ、機能を失った合成樹脂管は、大切な自然を壊して いることにも気付かれないまま、掘り起こされることもなく、廃材として永久に土の中に捨てられてしまうことになりました。

 そのような状況の中、昭和30年前後に施工さ れた土管を使用した暗渠排水が、今でもその機能を維持しつづけていることに気付かれた関係者の方々は、昭和50年代後半頃から 長い実績を持つ土管暗渠 に注目され その排水能力耐久性を高く評価され、再び土管をご使用いただくようになりました。暗渠排水は効 かないものと諦めかけていた農家の方々も、子供の頃、自分の家の人が土管暗渠をしたり、近くで見た経験があったため、抵抗なく土管を受入れていただきました。この ようにして施工された土管暗渠は、現在も詰まることもなくその機能を発揮していま す。

 最近、NHKの「週間こどもニュース」や日本テレビの「1億人の大質問」で
農業排水用素焼土管” として大きく紹介されています。

4.そして未来へ
 (環境は子孫からの借りものです

 ダイオキシン、 環境ホルモン などの化学物質による環境汚染が心配されるなか、これから先はいかに自然の環境を保持できるかあるいは改善し、われわれの子孫へ引き渡すかが大きな課題となります。
 自然の土でできた素焼という素材は、埴輪の時代から人類とともに存在し、無機質で多孔質のため環境浄化バクテリアの格好の住処となり環境を浄化します。

 まさに 地球にやさしい究極の素材 として、いま各方面で注目されており、暗渠排水も自然の土でできた土管が最適であると考えます。

参考

  冨田甚平 (jsidre)