楠木谷1号窯跡で出土している、いわゆる藍九谷様式の中皿(左)と初期伊万里様式の小皿(右)である。
左の中皿は、型打ち成形されており、器壁が薄く、高台径も大きい。鮮やかな呉須で、内面に色紙を配して、中に菊文を描いている。外面には胴部に蔓草を迴らし、高台内に一重角枠内に「福」字を染付している。
右の小皿はロクロ成形のままで、器壁は厚く、高台径は小さい。呉須はくすんだ色調で、見込みに柘榴文、周囲に捻花状の文様を配すが、外面は無文である。
一般的に伝世品などを元にした形式学的な考え方では、まず間違いなく右の小皿が古く、左の中皿が新しいことになる。ところが、両皿の出土層位はまったく同じであり、ほぼ同じ頃に生産された製品であることが確認できる。
直接中国などから古九谷様式の生産技術を導入した可能性の高い窯の場合は、こうしたまったく異なったスタイルの製品が併焼されるのが一般的である。同様な傾向を有する窯としては、ほかに山辺田3号窯跡に例が認められる。しかし、間接的に技術を導入した窯の場合には、こうした明確な作り分けは行われず、両様式の中間的な製品が主体となる場合が多い。
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