染付花蝶魚文小皿       (楠木谷窯跡/1650年代後半)

 

 

(内面)

(外面)


 楠木谷2号窯跡の物原から出土した、底径5.5cmほどの小皿である。おそらく口径は、13cm前後と推定される。器高は3.6cmほどで、口径に比してやや高めである。
 見込みには、草花とその上に蝶を二匹描き、周囲にはおそらく3方向に魚文を配している。外面には口縁部と腰部、高台基部にそれぞれ一重の染付圏線を迴らし、胴部に草文を配している。
 2号窯跡では散見されるが、1号窯跡では出土しない。ほかの窯場でも、1650年代後半頃に操業している窯では認められるため、比較的年代を考える上では基準となりやすいものである。 
 実はこうした製品は、厳密にいえば、従来の「初期伊万里」、「古九谷」という様式分類の範疇には適当な収め場所がない。器厚は底部で0.6cmほどと比較的厚めで、質的には一見初期伊万里に近い。しかし、文様の配し方や畳付の処理などは、どちらかといえば古九谷様式に近く、両者の中間的な要素を有している。
 ただし、初期伊万里の技術の中に、副次的に最先端の古九谷様式の技術を導入して作られたような、両者の混合スタイルの製品とは同一視すべきではない。なぜならば、こうした種類も、比較的雑な製品スタイルとして、古九谷様式と同様に新たに誕生したものであり、直接従来の初期伊万里の延長線上に位置するものではないからである。
 つまり、古九谷様式の原点が、中国・景徳鎮系の技術にあるのに対して、おそらく福建省・広東省あたりのいわゆる呉須手の製品を模したものと推定される。同様な種類として位置付けられるものには、「日字鳳凰文皿」をはじめ、この頃には比較的多くのものがある。

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