これまでご紹介してきた製品と同様に、泉山口屋番所遺跡の廃棄土壙から出土しているものである。これまでの製品も含めてやや年代幅は取って示しているが、ほぼ1690年代を中心とした元禄時代頃の一括資料と考えて間違いないだろう。
口径は約11.4cm、底径4.6cm、器高5.2〜5.5cmほど。捻花状に型打ち成形し、外面には、2方向に同意匠の網干山水文を描いている。高台内には、一重の圏線の中に「太明年製」銘を2行に配し、見込みには二重圏線内に手描きの五弁花文を描いている。
こうした手描き五弁花文は、1680年代には確実に出現し、1690年代頃から急速に普及していく。また、高台内に圏線を迴らし、中に銘を配す碗・鉢類の割合が高いことも、この前後の時期の一つの特徴と言えるだろう。
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