白磁菊花形鉢       (泉山口屋番所遺跡/1680〜1700年代)

 

 

(内面)

(外面)

 泉山口屋番所遺跡の廃棄土壙から出土した鉢である。全体を菊花形に型打ちしており、窯割れが激しいため正確な数値は分からないが、口径は20cmほど、底径は約8.5cm、器高は9cm前後である。
 口唇部は平らに整形し口銹を施しているが、染付などの文様は付されていない。白磁として流通している可能性もあるが、色絵素地として用いられた可能性も高い。ほぼ同じ形状の製品に上絵を付したものが伝世しており、いわゆる柿右衛門様式に区分されている。ただし、南川原産と推定される類似伝世品などと比べると、いくらか表面が青味を帯びており、高台の処理もやや雑である。
 つまり、こうした製品などからも、内山でも柿右衛門様式と同スタイルの製品が生産されていたことはほぼ間違いなく、本来様式という意味では質差で区分すべきではないため、これらも柿右衛門様式に含めるべきであろう。しかし、問題なのは、南川原がほぼ一時期一窯で生産された最高級品の生産地区であるのに比べ、内山の場合は高級量産品を生産した多くの窯で構成されている点である。したがって、南川原の場合は全体的に製品の質が高く製品間の質差も小さいが、内山の場合はその幅がかなり大きい。つまり、格段に生産量も多い内山の製品まで無作為に含めると、とめどもなくその範囲が広がってしまい、様式としての一定の概念を構築することが極めて難しくなってしまうのである。現在一般的な様式を基本とした区分では、おそらくこうした問題を矛盾なくクリアすることは不可能であり、今後何らかまったく新しい分類方法を模索する必要があるだろう。

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