色絵草蝶文燭台       (幸平遺跡/1650年代後半〜1670年代)

 

 

(上面)

(側面)

(底面)

 先日、「Discover 有田」にて、色絵工房跡の可能性が高い“幸平遺跡”の新発見をご紹介した。その後、徐々に事務的な手続きは進みつつあるが、まだ、調査に関する具体的な日程等は決定していない。先日は、遺跡発見の記述で3点ほどの色絵磁器をご紹介したが、本日は、同様にその際に出土した色絵製品の中に、ちょっと変わったものがあったので掲示しておくことにしたい。
 写真の色絵磁器は、形状から、おそらく燭台かと推定されるものである。ただし、類似した製品は知らないため、正確なことは分からない。
 直径11.5cmほどの皿状の器の中央部に高さ約7.0cmの高坏状の器が貼り付けられており、その内面中央部には、直径0.5cmほどの穴が開けられている。外面は底部が無釉で糸切痕が残っており、よく見ると、周囲は円形に剥離痕が残っている。こうした点から、この底部には本来さらに台脚が付いていたものと想像される。
 素地は染付の入らない白磁で、文様は上絵具を用いて内面のみに描かれている。全体的に唐草や草文が配されているが、中央の凸部の内面には小さな蝶文も見られる。絵具は全体的に黒ずんで見えるが本来は緑一色で塗られており、輪郭線には黒が用いられている。こうした緑絵具の色調は、時期とともに変化することが確認できており、この製品に用いられている深い緑の色調は1660年代頃までは類例が多いが以後徐々に減少し、1690年代を境にほとんど認められなくなる。したがって、この製品は1660年代を中心としたその前後の製品である可能性が高い。

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