染付草花七宝繋ぎ文瓶    (天狗谷窯跡/1630年代後半〜40年代)

 

 

(側面)

(底面)

 これまで天狗谷窯跡の製品を紹介してきて、出土量の割合に比して、極端に瓶や碗類を示すことが少なかったことに気付いた。皿などに比べ、破片では原形を把握することが難しいのが、最大の原因である。しかし、何だかしょっちゅう碗や袋物が多いと書いてて皿ばかり紹介するっていうのも、それはそれですっきりしない。というわけで、本当は、たまたまコンテナの中でごろごろしてた残りのいい瓶が目に止まったっていうのが落ちだが、一つ昨年出土した染付瓶を紹介しておきたい。
 この染付瓶は、発掘調査した物原層の中でも、2番目に古いA窯期と推定される土層から出土しているものである。A窯構築時のものと考えられる整地層の直上に堆積した物原層から出土しており、おそらく1630年代後半〜40年代頃の製品と推定される。
 高さ20.5cm、口径5.5cm、底径は6.8cmほど、天狗谷窯跡の瓶としては、この程度の大きさのものがもっとも出土量が多い。胴部は二重の染付縦線で4つの窓に区画されており、交互に草花と七宝繋ぎの文様が配されている。また、底部に高台は付されておらず、底面を削って刳り高台としている。
 ところで、こうした形状の瓶は、1650年代頃に刳り高台から一般的な高台に移行したことが知られている。天狗谷窯跡の場合も各窯に見られるが、最古のE窯とA窯の出土品は刳り高台であり、続くB、C窯では一般的な高台へと変化している。その境界の時期に当たるのが、以前はD窯と称されていたB窯の古い段階で、ここで刳り高台が認められることから、B窯の操業時期の間にこうした移行が行われたものと推定される。

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