数層堆積していた最古期に属す土層から出土した中皿である。口径22.7cm、底径14.7cm、高3.3cm、表面はわずかに青味を帯びる程度で純白に近い。
内面には、下部に呉須で網干文を描いており、加えて、絵具がほとんど剥落して見えにくいが、上部左に水面や岩、右に群鳥文がうっすらと残る。また、外面には文様は描かれておらず、高台径は大きめで、内部には3ヶ所ハリ跡が残る。
一見して分かるとおり、本来は、染付製品として、すでに完成品となりうるものである。たまたま思いつきで上絵を付けてみたとも捉えられないわけではないが、こうした染付製品に付加的に上絵を添付する方法は、1650〜60年代頃の製品には比較的例が多い。これは、1640年代に導入された元となった技術自体が内包していた方法で、型打ち成形の製品などに顕著に現れるが、同形、同文の製品を染付、色絵、青磁など、さまざまに作り分けている。つまり、色絵製品であっても素地は専用のものではなく、適宜使い分けをしている。こうした技法を多用した代表的な窯が楠木谷窯跡であり、同時期の山辺田窯跡など色絵専用素地を用いる窯などとは、やや技術の性格が異なる。
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