青磁隅入方形皿  (ムクロ谷窯跡/1730〜40年代)

 

 

(内面)

(外面)

 やはり、ムクロ谷窯跡の焼成室床面から出土している、青磁の型打ち成形隅入方形皿である。このまま流通したものもあるだろうが、色絵素地として使用されている可能性も高い。高台は粘土紐を貼り付けて長方形に成形しており、高台内にはハリ跡が2個所残る。
 この窯は、南川原地区の中でも、上南川原に位置する。同時代に操業した同地区の窯場としては、ほかに樋口窯跡もある。ところが出土した窯道具に押印された所有者印には、丸文状の巴形のものや一重方形枠に「上」字を配したものなどもある。こうした印銘は下南川原地区の柿右衛門窯跡や南川原窯ノ辻窯跡で多く出土しており、上、下南川原の交流の深さを表している。特に一重方形枠に「上」字銘は、江戸時代の酒井田柿右衛門家の成形用土型などにも多用されている銘であり、酒井田家もこのムクロ谷窯での生産に関わった可能性は高い。実際に文献資料では、一時期酒井田家が上南川原で生産したことが分かる。

 




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