色絵草花蝶文嗽碗       (赤絵町遺跡/1690年代〜1710年代)

 

 

(内面)

(外面)

 先日ご紹介した色絵花散らし文嗽碗と同質のやや雑な質の製品である。ただし、こちらは染付は一切用いておらず、白磁に上絵を付けたものである。外面は赤絵具だけを用い、高台脇に圏線、胴部には圏線と帯を迴らしている。この赤の帯も輪郭を描いて内部を塗り潰したものではなく、筋車に載せ一気に描いたものである。内面は見込みに赤・黄・紫を用いて花文を描き、蛇ノ目釉剥ぎした部分を隠している。その周囲には、三方に緑で葉を描き、胴部に花や蝶文を描いている。ここで用いられている緑は黄緑系のもので、1690年代に新たに使われるようになり、以後金襴手スタイルの製品ではごく一般的に使用されるようになる。赤も輪郭線用が塗り潰し用よりも濃いのが一般的であるが、この製品の場合、塗り用にも濃い赤紫の絵具を使用している。こうした用法も、金襴手スタイルの製品には多々見られる。また、使われる絵具の組合せや対称的に文様を配置する構図も同様である。しかし、白磁素地を用いて口銹を施し、余白を十分にとる方法は、柿右衛門様式に通有なものであり、両スタイルの接点となる時期の様相を表している。

 




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