染付松文碗             (天狗谷窯跡/1640年代)

 

 

(外面)

(内面)

 夏に行った天狗谷窯跡の発掘調査で出土した碗である。二番目に古いA窯の物原から出土しており、1640年代の製品と考えて間違いないだろう。外面胴部には松文を描き、高台脇から高台内の釉を剥ぎ、畳付以外には銹釉を塗っている。
 こうした高台内の釉を剥ぐ方法は、通常1640年代〜50年代頃に流行したとされ、高台部の施釉を省略することによって製造コストを押さえる目的があったと考えられている。高台部に施釉しなければ、改めて畳付などの釉を剥ぐ工程が省略できるからである。
 しかし、これは主として1650年代以降の雑器化した製品に認められる傾向であり、本来コスト削減が高台無釉碗の製造意図であったとは考えられない。なぜならば、この製品でも明らかなように、早い段階の製品は高台脇の釉をあらためて奇麗にまっすぐに削り直しており、工程の省力化には直結していない。しかも、この製品のように、無釉部分に銹釉を掛けているものも多く、逆に工程的には複雑になっているからである。
 高台を無釉にする本来の意図は、現状では明らかではない。しかし技法的には、すでに1630年代以前から、外面に鉄釉や青磁、内面に透明釉を掛け分けた製品の一部では用いられている。

 




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