「窯跡出土の初期色絵素地大皿について」
−山辺田窯跡・丸尾窯跡を中心として−
村 上 伸 之 その5
■ STARTING
POINT ■ 本日は、山辺田2号窯跡出土色絵素地の分類を示した部分を掲載する。 (註)原文では、それぞれ二重「□」(染付入り素地)、「□」(白磁素地)内に分類記号の数字を入れ、
本文中では、染付入り素地を3種類、白磁素地を口縁部の形状から《A》〜《D》・《F》の5種類、計14タイプに細分し、底部の形状から《ア》〜《エ》の4種類、計11タイプに細分した。
白磁素地がほとんどを占めるが、1〜4号窯跡の物原の位置関係は必ずしも明確になっておらず、生産品の全体像は厳密には捉えられない。
2号窯の素地であることを区分している。しかし、これらは機種依存文字であることから、ここ
では染付入り素地、白磁の色分けで表示することにした。
3. 出土素地の分類 (三)山辺田2号窯 本窯から出土している色絵素地の可能性があるものは300点ほどあり、その中で染付の入るものは3点だけである。 染−1類(PL.3−3) 染−2類(Fig.5−1) 染−3類(PL.3−4) =染付の入らないもの= (1)体部からの分類 《A》口縁部の直行するもの Fig.5へ A−1類(Fig.5−8〜10) A−2類(Fig.5−2) 《B》口縁部の外反するもの Fig.5へ B−1類(Fig.5−3) B−2類(Fig.5−4) B−3類(Fig.5−11) B−4類(Fig.5−5) 《C》折り縁にするもの Fig.5へ C−1類(Fig.5−12) C−2類(Fig.5−13) C−3類(Fig.5−14) C−4類(Fig.5−6) C−5類(Fig.5−15) 《D》体部を2段以上にするもの Fig.5へ D−1類(Fig.5−7) F−1類(Fig.5−16) F−2類(PL.3−5) (2)底部からの分類 《ア》高台の断面をU字形にするもの PL.7へ ア−1類(PL.7−13) ア−2類(PL.7−14) ア−3類(PL.7−15) ア−4類(PL.7−16) 《イ》高台の断面を四角くするもの PL.7へ イ−1類(PL.7−17) イ−2類(PL.7−18) 《ウ》高台の断面をV字形にするもの PL.8へ ウ−1類(PL.8−1) ウ−2類(PL.8−2) ウ−3類(PL.8−3) 《エ》高台の高いもの PL.8へ エ−1類(PL.8−4) エ−2類(PL.8−5)
高台内に《1−2》の圏線を廻らし、ハリ支え痕を残すもので、高台は3号窯のウー1類に類似している。
口径23cmほどの小型の丸皿で、内外面の口縁部に1本、外面高台脇に2本の圏線を廻らしており、高台内にも高台に接して《1−?》の圏線が配されている。高台は3号窯のウ一1類にやや似てはいるが、外角の削りはわずかである。胎土は染付製品とあまり変わらないもので、腰部にはカソナ削りをわずかに残している。
台鉢の可能性があるもので、口縁を外側に折り、胴部をえくぼ状に窪ませている。
一般的な丸皿。口径は40cmを超える大型のものから20cm代の小型のものまで様々で、出土量は最も多い。しかしこうした種類の丸皿で、内底周囲に段を付した製品は出土していない。また本類と推定されるもので、口銹を施したものもわずかに見られる。
口縁の端部を平らにしているもの。
口縁の端部を外側に曲げたもの。
口縁部の大きく外反する深めのもの。
口径36cm前後と推定され、口縁の端部を内側に折ったもの。内底周囲に段を付している。高台幅は広く、ハリ支え痕が残っている。
口縁部を一度外反させ、端部を内側に曲げたもの。
口径34cm〜37cm程度で、体部の下の方から折り曲げ、口縁部が直行するもの。内底周囲には段が付されている。高台幅は比較的広い。
口径34cm前後と推定され、C−1類と類似しているが内底周囲に段の付かないもの。
口径34cm前後と推定され、体部の下の方から折り曲げ、口縁部が外反するもの。内底周囲には段が付されている。高台幅は広くハリ支え痕が残っている。
口縁部を折っているもの。内底周囲には段が付されている。
口径33cm前後と推定され、口縁の端部を内側に折っているもの。内底周囲には段が付されている。
体部の下方で一度外側に折り、口縁部を内抱えぎみにしたもの。内底周囲には段が付けられている。
高さ2cm前後の高台を付し、口縁部が直行するもの。内底周囲に段が付けられている。口径は24cmほどと推定される。
高さ2cm前後の高台を付し、型打ち成形されているもの。内底周囲に段が付けられている。口縁部の破片と推定されるものは、端部を平らにして口銹を施している。
高台の外側面をやや内傾させ内側面を直立させたもので、畳付の両角を削って丸くしているもの。作りが雑なものが多く畳付の形状が一定しておらず、平らに近いものもある。4号窯のア−2類に近い。形状の分かるものにはA−1類、B−3類、C−1類などがあり、B−3類の高台はウ−1類にやや近くて高台幅が広いが、他は比較的狭い。
ア−1類と類似した高台で、畳付は尖らせぎみにしているもの。4号窯のア−2類に近いものと、ウ−1類に近いものがある。形状の分かるものにはA−1類、C−1・3類などがあり、C−1・3類はウ−1類に近くて高台幅が広く、他は比較的狭いものが多い。
高台の内外の側面を内傾させ、畳付を丸く削っているもの。畳付が平らに近いものもある。4号窯のア−1類に近い。形状の分かるものにはA−1類とC−5類があり、高台幅は狭いものが多い。
高台の内側面をほぼ直立させ外側面を内傾させたもので、高台内を深く削っているもの。4号窯のイ−4類にやや近い。形状の分かるものにはA類かB類と推定されるものがあり、高台幅は狭い。
高台の外側面をやや内傾させ内側面を直立かわずかに内傾させたもので、畳付を平らに削っているもの。4号窯のイ−3類に近い。形状の分かるものにはA−1類とC類があり、高台幅は狭いものとやや広めのものがある。
イ−1類と類似した高台で、畳付の外角を傾斜に沿って削り、内角は斜めに削っているもの。4号窯のイ−1類に近い。形状の分かるものはA−1類があり、高台幅は狭い。
高台の内側面を直立させ外側面を大きく内傾させたもので、畳付にはほとんど平らな面を残さないもの。畳付両角の釉を高台の傾斜に沿って削っている。4号窯のウ−1類に近い。形状の分かるものにはA−1類と推定される口径40cmを超える大皿やD類の可能性があるものがあり、高台幅は比較的大きい。
高台の内側面を直立させ外側面を大きく内傾させたもので、畳付を丸く削っているもの。4号窯のウ−3類に近い。形状の分かるものにはA−1類と推定されるものがあり、高台幅はやや狭い。
高台の外側面をやや内傾させ内側面を大きく外傾させたもので、畳付を平らに削っているもの。高台内の中央近くを円凹状に削っている。4号窯のウ−4類にやや近い。形状の分かるものにはA−1類とC−1類か3類と推定されるものがあり、高台幅は狭い。
高さ2cm前後で畳付を平らに削っているもの。F−1類の高台。
高さ2cm前後で畳付を丸く削り、外角は傾斜に沿って強く削り込んでいるもの。F−2類の高台。
■ COMMENT ■ ● 山辺田2号窯は、焼成室床面に1650年代頃の製品が残っており、つまり、操業の下限がこの頃と推定されるため、古九谷様式の色絵素地を生産したと考えられる有力な窯である。隣接して並行している1号窯も同様な状況が認められるが、現状ではその前後関係は明らかになっていない。 ● 山辺田2号窯の出土製品は、前回ご紹介した4号窯と類似性が高い。これは、4号窯は実際にはもっと古い時期の窯であり、現在4号窯製品とされているものの多くは、この2号窯ないし1号窯の製品である可能性が高いことが最も大きな要因と考えられる。
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