「窯跡出土の初期色絵素地大皿について」
−山辺田窯跡・丸尾窯跡を中心として−
村 上 伸 之 その7
■ STARTING
POINT ■ 本日は、山辺田1号窯跡出土色絵素地の分類を示した部分を掲載する。 (註)原文の遺物分類の表記には機種遺存文字を含む。そこで、ここでは各窯の表記に色分けを用い、以下のように示した。
染付入り素地は1点しか出土しておらず、ウ類の高台を有している。また白磁素地も、全体の形状が判明するものは3点に過ぎないが、体部の形状が分かるものには《A》〜《C》・《F》の4種類がある。また、底部の形状から《ア》・《イ》・《エ》の3種類、計7タイプに細分した。
●3号窯 染付入り素地 「□−□類」 白磁素地「□−□類」
●4号窯 染付入り素地 「□−□類」 白磁素地「□−□類」
●2号窯 染付入り素地 「□−□類」 白磁素地「□−□類」
●7号窯 染付入り素地 「□−《□》類」 白磁素地「□−〈□〉類」
●1号窯 染付入り素地 「□−〔□〕類」 白磁素地「□−〔□〕類」
3. 出土素地の分類 (五)山辺田1号窯 本窯から出土している色絵素地の可能性がある製品は少なく、20数点にすぎない。 染付の入るものは1点だけで、高台内に《2−?》の圏線を配した底部の破片が出土している(染−〔1〕類・PL.4−6)。高台外側面と内底周囲にも二重圏線を廻らしているが、内底に段は付されていない。高台は内側面を直立させ外側面をやや内傾させたもので、畳付両角の釉を傾斜に沿って剥いでいる。(ウ−〔1〕類)。 染付の入らないものも、全体の形状が分かるものは3点だけである。体部の破片ではA類、B類(PL.4−7)、C類(Fig.5−31)、F類(PL.4−8)がある。F類は腰部を折ってほぼ直立させたもので、外面口縁部を膨らまし、内底を円凹状に削っている。 《ア》高台の断面をU字形にするもの ア−〔1〕類(PL.8−12) ア−〔2〕類(PL.8−13) ア−〔3〕類(PL.8−14) ア−〔4〕類(PL.8−15) 《イ》高台の断面を四角くするもの イ−〔1〕類(PL.8−16) イ−〔2〕類(PL.8−17) 《エ》高台の高いもの エ−〔1〕類(PL.8−18)
底部についてはいくつか種類があるため、記号を付して説明する。
高台の内側面を直立、外側面をやや内傾させ、畳付の両角を斜めに削って平らな面を作っていないもの。A・C類があり、C類は2号窯のア−2類に近く、高台幅はやや広く、高台内にハリ支え痕が残っている。
高台の内側面を直立、外側面をやや内傾させ、畳付を丸く削っているもの。高台幅はあまり広くなく、B類がある。4号窯のア−2類や2号窯のア−1類に類似している。
高台の内側面を直立、外側面をやや内傾させ、畳付の外角を丸く削って内角はほとんど削らないもの。高台幅はやや広い。3号窯のア−2類にやや近い。
ア−〔3〕類と類似した形状で、高台内側面も内傾させているもの。高台幅はあまり広くない。
高台の内側面を直立あるいはわずかに内傾させ、外側面をやや内傾させ、畳付を平らに削っただけのもの。高台幅はあまり広くない。2号窯のイ−1類に近い。
高台の内外側面をやや内傾させ、畳付を平らにして両角の釉を傾斜に沿って少し剥いでいるもの。高台幅はやや広く、内底周囲に段が付けられている。
高さ2cm前後の高台で、畳付を丸く削っているもの。4号窯のエ−1類に近い。
■ COMMENT ■ ● 山辺田1号窯は、焼成室床面で染付大皿をはじめ、1650年代頃の製品が多く出土しており、おそらくこの窯で色絵素地が生産されていることは間違いない。ただし隣接して2号窯が並行して登っており、やはり床面から1650年代中頃の製品が出土しているが、立地を考慮すれば両窯が併存関係にあった可能性は低いように思われる。一方から一方へと引き継がれた可能性や、2号窯の焼成室覆土中に包含された製品を床面製品と誤認した可能性なども考えられるが、現状では確認できない。 ● 発掘調査等で出土している山辺田1号窯の製品は少ないが、実際には通常4号窯製品として位置付けられているものの中に、この窯の製品が多く含まれている可能性は高い。
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