この表現は確かに間違いではないのだが、本当の意味を知らないとちょっと誤解を招くことがある。 |
何が「陶器窯」で、何が「磁器窯」なのか??
この問いに対して、おそらく「陶器を生産している窯が陶器窯で、磁器を生産している窯が磁器窯」というのが、ごく素直な答えであろう。実際にそうした意味で用いられている例が一般的である。つまり、生産品の種類が窯の位置付けを規定する第一義的な要因となっているのだ。 もう少し学術的なたいそうな答えを期待、あるいはイメージしていた方も多いかもしれない。しかし、突き詰めればこれが現実である。それにも関わらず、この分類を基本にすえてさまざまな論理の展開が図られるため、ほかに何らかの深い意味があるのではとつい思ってしまう。
しかし、それを記述される方が意識しているかどうかは別として、実際には製品の種類で分類しているようであっても、その背景にはもっと根源的な違いがあるのも確かだ。 それは、多くの地域の窯業では、おおむね生産品の違いとは、生産技術差と関わりがあるからである。たとえば、それまでその地域に根差した技術で陶器生産が行われていたが、後に肥前から磁器生産の技術が導入されて磁器窯が誕生したとする。その場合、一般的に磁器生産技術はそれまでの陶器生産技術とおおむね融合することなく、併存する形が取られている例が多い。つまり、一見生産品の種類だけが基準になっているように思えるが、実はその背後に根本的な技術要因が隠れているのである。だから、製品の種類による分類によってさらなる論理の展開が図られても、大概的には矛盾が生じないのだ。
ただし、こういう一種のからくりに気付かないまま形式的にこの手法を用いると、ちょっと困った方向に進んでしまう例もある。
有田をはじめとした肥前の窯業である。
日本磁器の生産技術は、多元的な源流を持つ陶器と異なり、肥前が一元的な原点を持つ。日本の各地で生産された磁器も、元をたどればすべて肥前に帰着するということだ。 したがって、肥前の窯については、「陶器窯」、「磁器窯」という分類は、本当に生産品の違い以上の深い意味はなく、どうでもいいことだが、むしろ表現としては「陶器生産窯」、「磁器生産窯」、「陶磁器生産窯」の三分類の方が多少は分かりやすいのかもしれない。何れにしても、その程度のものだということを、書く側も読む側もしっかり認識する必要はあるかと思う。
こんな些細な用語一つでも、意外な落とし穴が潜んでいることがお分かりいただけただろうか??
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