第1026回 百獣の王 〜皆が頼りにするのは〜

  平成24年 9月20日〜

 ある研修会で動物園の園長先生のお話を聞きました。
園長先生は、演台に登場するといきなり参加者に尋ねられました。

「みなさんは、百獣の王といったら何を想像しますか。」

その問いかけに、ライオンとか、ゾウとか、虎とか、口々に言っていましたが、
一番多かったのはライオンさんでした。

それを聞いた園長先生は、「そうですネ、ライオンさんは強いですネ、でも
私はそうは思いません。私はキリンさんだと思います」と意外な答え。
なぜだろうとそのあとの話に耳を傾けました。

 ライオンさんは強いですね。でもライオンさんのそばに近づいていけますか、
ヨシヨシといって、ライオンさんを撫で、さすることができますか、
そんなことをしたら食べられてしまいます。


だからライオンさんのそばには誰も近づくことはできません。
ライオンさんは強いけれども、孤独です。

それにひきかえ、キリンさんのまわりには、小さな動物達がいっぱいいて、
仲良く一緒に草を食べたりしています。

キリンさんは背が高く、長い首でいつもあたりを見まわし、肉食の危険な
動物がいないかと見張っています。

危険が迫ったら一目散に逃げていきます。
その姿を見て他の動物は危険が迫ったことを知り、キリンさんの後に
ついて逃げていき助かるのです。

だから、キリンさんの近くにいると安心、安全なんだと小さな動物が
寄ってくるそうです。

続いて園長先生は、今日の社会は、強くなれ、一番になりなさいと、
頑張って、頑張れと、ライオンのような子ども達を育ててこなかったでしょうか。

頑張って、頑張って、フッと気づくと、仲間のいない、孤独で、見回すと
ライバルしかいない寂しい人生を歩んでいなかったでしょうか。


 キリンさんのような、みんながそばに寄ってこられ、安心して草を食べ、
危険が迫れば、いちはやく察知できるような安全な場所にしてくれる

キリンさんこそが百獣の王にふさわしいと思います。

ライオンのような人よりも、皆が集まることのできる、
キリンさんのような人を育てるのが、お坊さん達のつとめ、
宗教の勤めではなかろうかと、話を締めくくられました。


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 次回は、9月26日に新しい内容に変わります。

    本願寺派 伝道 仏さまのおこころ 片江哲海師より一部掲載


         


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