第354回 火をもらってきて



        平成11年11月 4日〜10日まで

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。
妙念寺では、毎年秋に、この一年の間に、大事な方を
亡くされた方々をお招きしての法座を開きます。

 今年は、11月13日と14日の午後です。

ところで、お釈迦さまは、我が子を亡くして悲しむ母親に
おっしゃったと伝えられるお話が、「大乗」という本に
掲載されていました。

大事な一人息子を亡くした老いた母親がお釈迦様に
お尋ねしました。
「お釈迦さま、さびしくて、苦しくて、はりさけるような、
このわたしのこころを、なんとかしてください」

お釈迦さまは、「どうすればいいのですか」
「息子が生きかえってくれれば、また楽しい、しあわせな
日がもどってきます」

お釈迦さまは、やさしく老婆をごらんになっておっしゃいました。
「あなたの息子さんを生きかえらせてあげよう。そのために、
どこかの家から香をたく火をもらってきてください。
しかし、その香の火は、これまでに死んだ人が一人も出た
ことのない家でなければなりません」

「そんな簡単なことで、息子を生きかえらせてくださるのですか」
「もらってきてくれた火で香をたいて、わたしは、あなたの
息子さんが生きかえるように、いのってあげましょう」
「はい、わかりました」

老婆はうれしくてうれしくて、かけるようにして、一軒の
家へとびこみました。
「火をください」
「火を、どうするのですか」
「香をたく火です」
「はい、わかりました」

家の奥から、香の火をもって出てきたその人に、老婆はいいました。
「この家には、いままで死んだ人はいらっしゃいませんね」
「いいえ、何人もの人が・・・・」
「それなら、この火はだめなんです」

老婆は、次の家、次の家と、なんにも食べていない、
ふらふらするからだで、香の火をもとめてあるきました。
何十軒、何百軒と、香の火をもとめてあるきました。
しかし、どの家をたずねても亡くなった人のいない家は
なかったのです。

「・・・・・人は生れ、そして、死んでいくのです。死は、
すべての人に与えられた、真実の姿ですから、
そこから逃れることはできません。
どの家の人も、あなたと同じさびしさ、苦しさにたえながら、
生きていらっしゃるのです。必ず終わる、いのちのなかで、
こうして生かさせてもらっている、そこによろこびも、かなしみも
あるのです。元気を出して、生きるのですよ」
目を上げると、そこに、やさしいまなざしのお釈迦さまの
お顔がありました。

13日と14日の法要にお参りください。
妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。

(大乗、11月号中川晟 仏典ほとけさまのまなざし より一部引用)



              

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