第557回 はっとするような言葉

 平成15年 9月25日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。

前回、豊島学由先生の大阪・津村別院でのテレホン法話の内容を
ご紹介しましたが、反響が大きく、もう一つ井上靖さんのことを語られた項目を
今回はご紹介させていただきます。

毎日新聞の記者時代、作家の井上靖さんが『歎異抄』に触れたのが宗教欄を
受け持っていた頃で、終戦後、京都の本屋で『歎異抄』をみつけ、あの美しい
文章を憶えていて、もう一度その文章に触れてみたいと思って買った。
そして何日がかりかで少しずつ読んだ。一応読んでおかなければならぬ本だ
というような気持ちで読んだといっておられます。


それから十年程して、比較にならぬ程、『歎異抄』の一種独特のリズムを
持った文章が美しく感じられた。清らかな水でも流れているような、
清らかな音が聞こえてくる。そればかりではない。ところどころに匕口のような
烈しく鋭い部分がはめ込まれてあって、はっとするような言葉に突き当る。


人間としての親鸞聖人のいちずさや、烈しさや、梃でも動かぬ、それでいて
美しいリズムをもった文章の間から見えてくる。すばらしいと思った。
丁度小説を書き始めようとしている頃であったと語っています。


日本歴史上の人物で、小説家として一番大きい魅力を感じている人物を
一人挙げるとなると、否応なしに親鸞聖人ということになる。
それは『歎異抄』のおかげであると。


 このように語っていた井上靖さんが『孔子』を発表して受賞されたとき、
次は親鸞を書きたいといっておられたが、果たさず亡くなられたのは
残念でなりません。


来年ご講師としておいでいただく、豊島学由先生はお書きいただいています。

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、10月2日に新しい内容に変わります。