第583回 あいみての のちのこころに

 
平成16年 3月25日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。

こんな歌をご存じですか、 藤原の敦忠の歌で

  逢ひみての 後の心にくらぶれば

     昔はものを思はざりけり

という歌。百人一首にもあり、ご存じの方が多いと思います。

在家仏教協会の理事長で、協和発酵の会長でもあった加藤辨三郎さんが、
「私と宗教」という文章で、次のように、会話の形で書かれたものに出会いました。


A 「遇ひ見ての後の心にくらぶれば  昔はものを思はざりけり

    という古歌がありますね。

  あれは、多分恋歌でしょうが、私には、この有名な恋歌が、私の信心告白の
歌のように感じられるのです。

全く、昔は何と、ものを思わなかったことよ、です。

仏教を聞いて、はじめて、研究の価値や、経営の意義について、多少ものを、
思わしめられるようになったと言えるかもしれません。」

B 「あなたのご心境が、何かうっすら、察せられるようです。
   私も、実は、あなたのような心持ちになってみたいと思うんですが、
   どうしたらいいのでしょう。」


A 「まず話を聞くことだと思います。嫌々ながらでもよろしい、
  何だつまらない話じゃないかと思われる話でもよろしい、むつかしくて
  解らない話でもよろしい、眠たければ眠っていてもよろしい、ともかく
  聞いて聞いて見るんですな。それから本を読むこと、これはあまり
  むずかしいものから入らずに、なるべく平易に書かれてあるものから
  はじめなさい。

  私は、若い社員諸君に、いつも金子大栄先生の 『 人 』 から読んで
  もらうことにしています。何より大切なのは、朝夕の念仏勤行を実行する
  ことでしょう。


  念仏を称えないで、只本を読んでいたんでは、それは雑誌を読むのと
  同じで、単にいくらかの知識を得るというに止まり、到底宗教的な心境など
  わかるものでありますまい。」


B 「お経なども読まなければ駄目ですか。」
A 「読むに越したことはありません。然し、少なくも最初は、ごく簡単な
   もの一つだけでいいと思います。
   あとは、独りでに段々進んで行けるでしょう。私には、『歎異抄』が
   一番ピッタリしますので、偈に添えて朝夕朗読しています。」

と書かれています。

お念仏を喜ばれた、加藤辨三郎さんの言葉です。

お念仏に出会うことで、見えてくるものがあるのです。
いままで感じられなかったことが感じられるのです。
それが南无阿弥陀仏の働きであるとの言葉でしょう。


妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、4月1日に新しい内容に変わります。

  在家仏教協会 発行
 仏教と私  加藤辨三郎著  『私と宗教」17頁の一部