第604回 やるべき時に 淡々と

 平成16年 8月19日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。
平和な時代から見ると 人間が人間を殺す戦争が起こるとき
国民はなんで反対しなかったのかと、疑問を持つものですが、
オリンピックで自分の国を徹夜してでも応援するように 
戦争であることの意識は薄らぎ 麻痺し目先のことだけしか
考えられず、大局を見失ってしまうもののようです。

今から20年前 東京に勤務していたころ 会社に出勤の前に 
築地市場のすぐ近くにあるインド風の建物・築地本願寺のお晨朝に 
時々参拝したことがありました。


そこに置いてあった 「築地本願寺新聞」を見ていましたら
「思い出の輪番」ということで 戦争中の思い出が書かれていました。

第二次世界大戦の最中 軍事施設で軍部主催の法要が行われ
多数の軍人が参列していたそうです。
法要の途中で サイレンがなり空襲警報が出たそうです。
参列した軍人たちは いっせいに防空壕に退避していきました。

やがて サイレンが鳴り止み静寂が戻ると 読経の声だけが
聞こえてきたそうです。

軍人たちは 遠くから「ご輪番 退避してください。
ご輪番 危ないですから こちらへ」と
大声で叫ぶ ばかりで 誰も出迎えにはこなかった 

お経は 最後まで 張りのある声で続いたということです。

軍人でも命を惜しみ 逃げるのに 最後まで逃げずに勤行を続けた 
大変な豪傑の輪番さんだったと 当時の職員の方が懐かしく
回顧しておられる記事を読みました。


時代劇に出てくる僧侶だけでなく、近代でも命をも惜しむことなく
平然と読経をつづける、今やるべきことを淡々と続けさせる 
そういう力を 宗教は持っているのかと
 感激して読みました。

命こそが大事といいますが いまやるべきことをやるべき時に
淡々と進める それが お念仏の働きだろうと。


ところで オリンピックで柔道や水泳の種目が好成績で 
大変盛り上がっていますが 40年前の第18回東京のオリンピックから
男子柔道は 正式種目になったようです。


戦後19年 まだまだ日本の戦後の復興が進んでおらず 
大きな競技場がないので 代々木に国立の競技場を作り 
水泳と柔道を同じ競技場で行う予定でした。

しかし、水泳が終わって 急いでプールの上に柔道競技場を
設営するのは 時間もなく難しく 問題はないかと 開会まで
500日前に国会で質問して 急遽 日本武道館を建設することを
推し進めたのが この輪番さんの その後の活躍とあります。


青少年の育成には柔道や剣道などが重要だ それにはちゃんとした
競技場が必要と 多くの国民にも浄財を募り
 あの大きな武道館が 
計画からわずか一年あまりで
 完成したといいます。

いまでは 武道だけではなく 大きな音楽のコンサート会場としても 
大いに活用されています。


今 必要なことを 淡々と 進めさせる どうゆう状況でも 恐れず
 やるべきことをちゃんとやらせる。

そういう働きが お念仏にはあるようです。

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。
次回は 8月26日に新しい内容に変わります。

 (このご輪番は 山形県天童市の善行寺 元住職 北畠教真師)