第903回 可愛い子には   〜厳しさ 苦しさを〜

 平成22年 5月13日〜

妙念寺電話サービス お電話ありがとうございます。

このところ 近くでも 遠くでも 多くの方々の訃報を聞きます。
日本のおばあちゃんと 云われた 北林谷栄さんが 98歳で 
亡くなられたと聞きました。

訛りが多いセリフを聞き馴染んでいたせいか 雪国の出身かと想像していましたが、
実は 東京銀座の生まれということに 驚きました。

もう、40年も前でしょうか お芝居で 東京から久しぶりに孫娘が 帰ってきて
待ち構えた北林おばあちゃんが スイカを勧めるシイーンがありました。

「冷えてるぞ 冷えてるぞ はよ食え はよーと・・・」と、主役の若き女優に
スイカを勧めます。

案山子が着ていたようなつぎはぎだらけの衣装、腰にはタオル しゃれた衣装の
孫むすめとの リハーサルも終わって いざ本番 運ばれてきたスイカを見て 
北林おばあちゃんは 「ちがう ちがう おばあは こんなに切らない」と注文をつけ。

若き主役女優は 「セリフがあるんですが・・・」と小さな声で訴えます。
聞こえたか 聞こえないのか 「可愛い孫には もっと厚く切るもんだーー」と
北林おばあー。

素直に「はい 分かりました」と、引き下がらない小道具さん。
どうも 若き女優は セリフが沢山あるので 食べやすくしてほしいと 注文を
付けていた様子。氷ついたような沈黙・・・・

困った僕は「まだ予備のスイカあるよね・・・ 厚く切ってきて・・・・ 
さあここが 主役の腕の見せ所 期待しているよ・・・ 
一発本番 予備のスイカはもうないよ ・・・・。 

そう タオルか おしぼりか 準備しといて・・・・」と 

フクレて 不安そうな 若き女優を 見て見ぬふりして 「さあ本番 行こうー」。

スイカのために 口も手もビショビジョになった孫娘へ近づいて  北林おばあは 
腰の汚れたタオルで やさしく拭いてやる、お祖母ちゃんを演じました。
劇団民芸の魂を見た感じでした。


いま 難しいことは 大人たちが配慮して 若者たちは 失敗や 苦労をしなくて
すむようにしています。安易に楽に 済ませることを教えています。


地域とのつながりや 親戚付き合い お寺との関わりなども 年配者だけが
中心になって行っています。

若い者のことを 思えば 大変なことだから 教え経験させておかねば
いけないのだと反省します。




カーラジオで聞きましたが 月に一度だけ 小学高学年で 自分で作った弁当を
持参する日を設定した 校長先生が 登場していました。

この計画を まず数人の父兄に話すと それは無理です。子供は 包丁を使えないし、
コンロも扱えない 第一 朝早く起きれないと 親たちは 反対したといいます。

しかし、1学期と2学期 家庭科の時間で 勉強してから 始めてみると 
自分の弁当だけではなく 家族の分も一緒に作り それを 食べた家族から 

喜ばれたことで 自分の存在が確認でき 誰かのために頑張ることの
素晴らしさを はじめて知った子供たちがいたとの話を聞きました。

かわいい子供や孫のことを思えば 優しいだけではなく 厳しさや 苦しさも
体験させ 伝えておく必要があるように 感じます。


そして すべてのものを救わねばおかぬという 阿弥陀如来も 決して私たちを
甘やかすばかりではなく 厳しさも 味わわせていただくのではないか。


可愛いから 厳しく 自分で体験させて 生き抜く力を与えていただくのではないかと
それが 本当の思いやりではないかと 感じています。

可愛いのなら 子供や孫のことを 本当に思うのなら 生き抜く力を与えること
それが 大事なことではないかと 思います。

南無阿弥陀仏と共に 生きていく 智慧を 教え 伝え 習慣づけていくことが 
何にもまして もっとも大切なことではないかと 味わいます。


妙念寺電話サービス お電話ありがとうございました。
次回は 5月20日に 新しい内容に変わります。


         


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