三根組 徳音寺  松信弘生

 もう、10年ほど前のことです。初めてお參りをした御門徒のお宅での出来亊です。
仏間に案内され、お仏壇をみてみると下の段の真ん中にお骨、上の段には、写真と白木の位牌が、御本尊を覆い隠していました。
「これはいけない」そう思い、お勤めが終わったら、話をさせていただこうと思いつつ、御本尊が見えるくらいに写真と位牌の位置をずらしました。その際写真の人物と位牌に書かれている情報を見てしまいました。
「写真は成人式でしようか、振袖を着てにっこりほほ笑んでいる女性で、位牌に書かれていたのは生きておられれば私と同じ年で、10年前に23歳で亡くなられたそのお宅のお嬢さんでした。

 お仏壇の御飾りについて、お話しをさせて頂かなければならなかったのですが、「娘さんのお遺骨ですか?」とお尋ねをしますと、堰を切ったようにお話しを始められました。
急性 骨髄性 白血病という病気だったそうです。当時結婚したばっかりだったのですが、病気が判明すると治療の甲斐もなくアッと言う間に亡くなられたんだそうです。

入院中の病室でのことで、意識が無くなる前の日のことです。
娘も治らないことが、命が長くないことが分かったのでしょう。
「お母さん死んだらどうなるの?」と聞くんです。私は「何を言ってるの。頑張らなきゃ。」と答えていました。それが娘との最後の会話です。
病気と闘い、最後は受け入れていたんだと思います。それなのに頑張れとしか言えなかった。そのことが今でも悔しくて涙が出てくるんです。

 娘の死を縁としてお寺さんにお参りをしていただくようになりました。仏様のお話も聞かせてもらい、今だったら頑張れではなくて、お互いに仏様にしていただいて、「また、お浄土で会おうね」と言えたかもしれません。
お仏壇のお飾りが間違っていることも分かっていますが、あえて当時のままにしています。私を仏道に歩ませてくれた病身の娘を忘れないように、そして、当時頑張れとしか言えなかった、私自身を忘れないように。

 かくばかり 仇に はかなき世を知れと
  教えて帰る 子は知識なり

 その後、13回忌を御縁に納骨をされ、振袖の写真も、他の写真と一緒に訪れる人に向かって、ほほ笑んでくださっています。

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