就 学 前 編
平成14年12月10日 5歳10月(入学まで4か月)
Maiiの就学問題も、”ようやくスタート”といったところでしょうか。
とは言っても、個人的には、私も漠然とした不安を持っています。

一つ目は、学校の考え方です。
身体的な障害を持つ生徒の訴えに、平成6年の札幌高裁の判決は、
学級編成や普通学級と特殊学級の振り分け入級処分については、子供に対する教育的配慮が最優先され るべきであるとしても、教育的設備、教諭や介護員等の要員の問題を抜きにしては決定することはできない。
このことから、現行法秩序のもとでは、校務をつかさどる校長に一定 の枠内で権限を与え、その専門的経験知識に立脚した客観的 視野のもとに、子供にとって、また学級運営上により適切な結論を出すことを期待していると解すべきである。
という考え を示しています。この判例を根拠に、学級の選択権は校長の裁量の一部というのが行政では一般的です。
それでも、学校や教委が、障害児学級への入学について保護者の承諾を求めるのは、
・ 自らの正当性を明確にしておこうという意図があること (裁判などは避けたい。)
・ 校長の裁量とされたことで、”校長がうんと言えばよい”ということが明確になったこと
などがあるのではないかと考えています。

二つ目は、子供の成長です。
見た目よりは分かっていると思えても、もう少し、しっかりしてほしいと思います。ダウン症の子は千差万別ですが、我が娘よ、 もっと大きくなれ。

三つ目は、娘が楽しく過ごせるかということです。
この場合は、担任の先生の力量に負うところが大きくなります。
平均的なダウン症の場合、健常児と比べて過重な負担がかかるとは思えませんが、障害児の対する先入観や差別(障害児にはそれ なりの教育という)意識がある場合は、必ずしも楽しい環境とはいえなくなります。
また、障害児教育を経験した先生が、必ずしも良い先生とは限りません。障害を持つ子を”障害児”としてしか見てくれない先生 というのが、一番困るからです。それよりも、先入観のない先生の方が柔軟に適応できるのかもしれません。(障害の内容によっ ては、専門的な知識を持つ先生が良い場合もあります。)

四つ目は、親がどこまで耐えられるかということです。
学校から付き添いを求められた時に、どこまで耐えられるかは自信がありません。
他の多くの地域では、学校或いは先生が対応しているところもありますが、Maiiの住む地域では、最初に保護者の責任と言われます。
ダウン症の子を普通学級に入れるのは、親のエゴと言われます。
そうした理解のない社会的風土になってしまったのは、学校の先生だけでなく、親自身も、障害を持つ子ども達の視点にたって考え ることをして来なかった結果だという気がします。
歴史は、積み重ねた分だけの重みしか持たないようです。でも、これから創る歴史には期待しています。

参考 : 子ども権利条約 第23条(平成6年に批准)
第1項 
締約国は、精神的又は身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の 下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。
第2項 
締約国は、障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、利用可能な手段の下で、申込みに応じた、 かつ、当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童及びこのよ うな児童の養護について責任を有する者に与えることを奨励し、かつ、確保する。
第3項 
障害を有する児童の特別な必要を認めて、2の規定に従って与えられる援助は、父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮 して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発 達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーシ ョン・サービス、雇用のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとす る。

平成14年12月25日 5歳11月(入学まで3か月)


 今日は、クリスマスです。幸い、まだ学校からの呼び出しはありません。
 12月5日にS市就学指導委員会が開かれているはずですが、この状態では、今年中は 呼び出しはなさそうです。
 法律的には、養護学校への就学予定者名を入学の3カ月前(12月末)までに、市町村教委は県教委に通知することになっており、 それがなかったと推測すれば、Maiiの養護学校への就学の可能性はなくなりました。
船津先生の新聞記事(平成14年12月) 記事に対するMaimaiの母と父の意見

平成15年1月5日 5歳11月(入学まで3か月)


 新年、明けまして おめでとうございます。今日は、父の誕生日、47歳になります。
 小学校では、1月24日に新入学生に対する入学説明会があるとのこと。
 その時に、「ちょっと残ってください」と言われるのかなあと思案しています。
 ただ、説明会には、保護者が来る人もいれば、来ない人もいるので、そんな状態では話し合いはないと思うし、校長先生が自分の顔を 覚えていないだろう、との母親の弁でした。

 後になって聞いた話ですが、説明会の際にある先生が、「学校は教育をする場だという信念を持っています。」と言われたとのこと。 そういう信念があるなら、障害の子であっても、しっかりと教育して欲しいと思うのですが、知識教育以外のことは認めないというよ うな偏狭な意識があるんではないかと心配しています。

平成15年1月20日 6歳 0月(入学まで2か月)


 学校から何の音沙汰もないので、少し不安になり、学校関係に詳しい人に、障害児学級に入級する場合の手順のことを聞いてみました。
 それによれば、障害児学級に入れるときは保護者の承諾(捺印)を取るのが一般的とのこと。
 後々もめるようなことになっても困るというのが、その理由のようです。それを聞いて、少し安心しました。
 ただ、最近、父は仕事で疲れているせいか、”本当に大丈夫?”という気持ちになっています。
・ 学校で何かあったとき、自分自身(父)が、すぐに動ける状態にあるだろうか。
・ 学校生活のリズムを、どんな風につくっていけばいいのだろうか。娘は、まだまだの状態です。
・ Maiiが甘えるので、母親は学校に行かないと言うが、それでうまくいくだろうか。
・ 学校は、Maiiの教育のために”親”と話し合う気はあるのだろうか。
・ 親は”学校”に何を望み、学校は”親”に何を望んでくるのだろうか ・・・・ など。
 相変わらず、漠とした不安を持ち続けながら、優柔不断な父は、なかなか開き直りも出来ずにいます。

平成15年1月28日 6歳 0月(入学まで2か月)


 最近、聞いた話ですが・・・・。
 養護学校に通う児童の保護者が、地元の学校に戻らせたいと学校に申し出て、養護学校側もそれを認め、地元の教育委員会と協議 を進めたところ、I 市の教育委員会は児童の就学を認め、K市の教育委員会は認めなかったという事例がありました。
 その後、進路保障の会の人達がK市の教育委員会を訪問し、話し合いを進めたことなどもあって、児童は 今年の4月から地元の学校(障害児学級)に通えるようになったようです。交渉の場では、地域の手をつなぐ育成会の方からも意見が 出され、その意見も強く反映されたとのことです。
 今回は、保護者の考えに変化があり、それを支える養護学校の教職員の理解があり、更には進路保障の 会などの周囲の協力があって実現したのですが、こうしたことがスムーズに行われるようになって欲しいし、可能な限り、子ども達 を地域に帰していく、地域の学校で受けとめていくという考えを、教育に携わる人達に持って欲しいと思います。

平成15年1月31日 6歳 0月(入学まで2か月)


 母親が、子供を就学させている先輩ママから話を聞いてきたとのことで、
・ このまま学校と話しをしないままでいたら、学校でMaiiがほったらかしになるのではないか
・ 40人の中の1人として扱われたら、落ち着きのない我が家の娘はどうなるの
・ 学校と早めに話し合いを進めて、何が出来るのか、何を求められるのか知りたい
・ 就学相談を受けずに入学させたら、子供に注意を払ってもらえず、1年間付き添いをさせられたうえに、結果的に養護学校に就学 せざるを得なくなった人がいる
などの実体験を聞いて、”このままじゃいけないんじゃない”と不満を漏らしています。
そうした事情もあって、近々学校に出かけて話しをしてみようと思います。
それにしても、障害を持っているというだけで、いろいろなことを考えなければならない現状に、これまで何も変えてこなかっ教育 のあり方に、腹が立ちます。頭に来ています。

ところで、市報を読んでいたら、小学校入学者には昨年10月に(学校教育法施行令第5条の)入学通知を発送し、中学就学者には 1月末に送付という記事がありました。
はて? 我が家にも来たのだろうか?
10月末といえば、就学前健診の案内が来た頃ですが、そんな内容が書いてあったのだろうか?
既にその案内は捨ててしまっているので、確認のしようもありません。
そういえば、既に2月になったというのに、1月末までに送付されるはずの入学通知は来ていません・・・・?。
月曜日にでも、S市の教育委員会に聞いてみようと思います。
S市に確認の結果
電話で確認したところ、入学通知は、就学前健康診断の案内と兼用しているとのことで、案内のあった人には、既に通知は済んでい るとのことでした。何となく、はぐらかされたような気分です。(2月3日)

平成15年2月7日 6歳 0月(入学まで2か月)


忘れられていたら困ると思ったので、学校に行って、校長・教頭さんと話しをしてきました。
そして、中途半端なままもいけないと思ったので、普通学級に入れたい旨を話してきました。
今度の1年生は、37〜38人のクラスになるかもしれないので、十分な対応が出来ないかもしれない。
1年T・T(ティームティーチング)は全員を対象にしているので、Maiiのみにかかりっきりになる訳ではない、ということを 特に強調されていました。
言葉は柔らかいのだけれども、”担任もMaiiにかかりっきりにはなれない”と何回も言われたときは、あまり歓迎されていない と言う印象を受けました。
また、”Maiiが就学相談を受けていないので加配の話しも出来なかった”と言われましたが、就学相談を受けていても、普通 学級に入れることに理解がない市や教育委員会が加配を認めるはずがない、と答えました。
学校だけではできないこともあるので父兄の協力を求めることがある、と言われたことには、
・ 給食時や昼休みの時間には、母親が学校に来ても良いということ
・ T・Tのいる日は、ある程度 学校に任せたいこと
・ 父親が、4〜5月は、週に1度程度は来ることも考えていること
・ 母親がいると、甘えて離れなくなって、学校どころではなくなること
・ 決まった時間にトイレに行くように指導してもらいたいこと  というような話しをしました。
母親に任せっきりになったら、学校の都合のいいように使われそうなので、そうならないような方向で考えていきたいと思います。
最後まで ”学校側はこれができる、こんな風にしたい”という話しは出てきませんでした。
こうしたことに努力するが、これをお願いしたい、というような話しでもありませんでした。
昨年の7月という早い時期に相談したことが、あまり生かされていませんでした。
担任は何時頃決まるのかと聞いても、4月にならないと担任は分からないとのこと。そんな状態で、それ以上の話しが出来なく なりました。今後は、担任が決まった段階で、担任先生と話しをしていきたいと思います。

平成15年2月12日 6歳 0月(入学まで2か月)


Maiiの2年前に入学した子の親御さんから助言をいただきました。
担任が決まったのは、4月1日の人事異動の数日後だったので、あまり焦らないこと。
担任の先生とだけ話をしたら、担任の先生だけに負担がかかる。学校全体で考えてもらうことが一番大切で、そのためには、 常に校長や教頭を交えて話をしていくことが大切、とのことです。
ありがとうございました。

平成15年2月19日 6歳 1月(入学まで1か月)


国の方で、今後の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議の中間まとめが、昨年秋に公表され、3月末には最終報告が 出されることになっています。
中間報告では、養護学校を特定の障害種別に区分しない特別支援学校にしていくとか、特殊学級の垣根を無くして特別支援教室に するというような考え方が示されていました。
(学級ではなく、教室という名前が使われており、原学級から生徒が通って来るという意味になります。)
特殊学級を無くして、全ての子供たちを通常学級の籍におくことには、”簡単にできることではない”という現場の声(抵抗)も 強いようです。”これまでやってきたことが全て”という発想から、なかなか抜け出せない先生はかなり多いようです。
国が方針を決めても、例外的に、特殊学級を設けることができるようになりそうなので、なかなか方針通りに進まない地域もでて くるのではないかと思っています。
ただ、この政策転換が、全生徒の6.3%いるといわれる学習障害や注意欠陥性多動症などの児童に対して、新たな経費を出費せ ずに対処するために考え出された方法だということには、異議もあります。
そして、少し心配しています。
もし、学校で、全ての子ども達を普通学級に入れるとした場合に、これまで特殊学級があるから入学できていた少し障害の重い子 ども達が、地元の学校から排除されるのではないかということです。
でも、そうした子ども達も、地元の学校に通えるようにしていくことの方が大切なのかもしれません。

昨日、Maiiの机が届きました。ランドセルも一緒に置くようにしました。
今朝は、下の兄が学校に行く時間に、自分もランドセルを背負って出かけようとしました。
その仕草は、数年前の兄たちと全く同じです。
いつまでも、そうした気持ちで学校に行けるように取り組んでいきたいと思います。

平成15年3月3日 6歳 1月(入学まで1か月)


入学まで1か月となって、少しづつ不安が大きくなってきました。
父親がこんな風だから、母親はもっと心配しているんだろうと思います。
Maiiもこの1年数ヶ月で、とても成長したと思いますが、周りの子ども達はそれ以上に成長しています。
その差の大きさに不安を感じ、ますます広がるであろう差の大きさに言葉が詰まります。
クラスが、38〜39人規模になるというのも気になります。
1年生という落ち着きのないクラスでは、先生の目が行き届かないかなとも思います。 う〜ん・・・・。

これまで、多くの保護者の皆さんが、学校のプレッシャーに押されて方針転換されてきた気持ちが、痛いほど分かってきました。 何とも言えないこの不安感。でも、ひょっとしたら、校長先生も、誰に担任してもらうかと悩まれているかもしれません。 不安なのは、自分たちだけではないと思うようにしました。

平成15年3月12日 6歳 1月(入学まで1か月)


F市では、小学校5年生になるまで、ダウン症だと分からなかった子がいる。
ある町では、障害の子を普通学級に入れる条件に、保護者に付添の誓約書を出させようとやっきになっている。
相変わらず、いろんなことが起きています。
子供の状態や教育の在り方なんかそっちのけで、教育現場が対応できないという理由でもめています。

児童が40人もいて(最近は30人程度のクラスも多いが)、躾が出来ていない子も多い。
そこに、障害の子がいれば、先生自身が混乱するというのも少しは理解できます、が、”だから、障害の子は入れない”という理屈に なるのは、何かが欠落しているような気がします。
親は、自分の子のことだから、心配なら付き添いもするでしょう。でも、親の目から見て心配ないと思った時でも、付き添いを求める ということでしょうか。
障害児を生んだら、どんな時も、いつまでも、側にいなければならないという社会環境、それで当たり前と思っている一般的な意識が、 障害児を社会から疎外しているのではないかと思います。

平成15年3月27日 6歳 2月(入学まで10日余り)


知は力である。知ることで湧いてくる勇気もある。
みやぎらしい教育を考える手始めは、この統合教育の分野にありそうな予感がする。
宮城県知事の浅野さんの、平成14年9月のメールマガジンに記述されていた言葉はとても新鮮です。
でも、一国一城の主である県知事でさえも、簡単には事を運べないということが、障害の子であっても普通に育てたいと思う家族に とってはつらい気がします。
もうすぐ、教員の人事異動の発表があります。多くの人達が期待と不安を抱えていると思います。

平成15年4月4日 6歳 2月(入学まで5日)


前々日に校長先生から電話があり、教頭と担任、それに両親で話し合いたいとのことでした。
父親も、その時間だけ休みをもらって学校に行くことにしていました。
ところが、突然業務が舞い込んで身動きがとれなくなり、父親が学校に着いたときには、学校との話し合いも終わっていたようで、 母親の姿はありませんでした。
4月1日の人事異動で教頭先生の異動があり、是非話をしておきたかったので残念です。
そして、どんな話し合いになったのか不安です。

後で聞いた話しでは、トイレや食事の際の対応などについて話しがあったとのこと。ただ、私たち自身が 2度も学校を訪問して話しをしてきたことについては、校長からは何も話しがなかったとのことでした。

平成15年4月8日 6歳 2月(入学まで1日)


明日は、入学式です。
少し暗い気持ちになっています。
母親は、もっと暗い?気持ちだと思います。
イラクでの戦争、SARS(重症新型肺炎)などなど、気が重いことも多くあります。
入学式が来て、暗い気持ちになるというのは、どこか間違っていると思います。



就学前編 終了