地元の小学校、中学校の普通学級への就学を望まれる方へ
障害のある子は、他の兄弟姉妹と同じ学校、同じ教室に通ってはいけないのでしょうか。
学校は、友達と一緒に学び、一緒に遊びながら、幼いながらも社会性を養う場所です。
ハンディを持って生まれてきたのに、そうした学習の機会が奪われるのは、更にハンディを背
負うようなものです。そう感じた方は普通学級への門を叩いてみましょう。
巡回就学相談への対応
地元の小学校の普通学級へ就学を希望する場合は、巡回就学相談を受ける必要はありません。
巡回就学相談への参加申し込みをしても欠席して差し支えありません。
参加しても、相談員には地域の小学校関係者はいないので、普通学級への就学の道が開くこと
にはなりません。
また、就学相談に応じると、市町教委のもとで就学指導委員会が判定を行います。その判定に
基づいて学校が保護者に対することになり、判定結果という材料を学校が持つことになります。
就学相談は受けない方が賢明なようです。
就学前健康診断
11月頃に、それぞれの学校では就学前健康診断が行われます。
市町教育委員会では、学校に対して、子ども達に身体的、知的な障害がないか把握することを
求めていますので、視力検査や聴力検査、知能検査、呼吸器検査など、障害の有無を確かめる
ことを主に行われます。
このため健康診断で通常行われるはずの身体測定や、伝染病予防など公衆衛生の面からの診察
は行われていません。なお、市町教育委員会は就学前健康診断を行うよう義務づけられていま
すが、保護者や子ども達には就学前健康診断を受ける義務はありません。
就学通知
市町教育委員会は、就学する子ども達の保護者に、1月末までに就学すべき学校を通知しなけ
ればなりません。
このことは学校教育法施行令に明記されており、理由の如何を問わず、1月末までに通知しな
ければなりません。通知がない場合は、その旨を市町教育委員会に伝えてください。
学校訪問と協議
学校長には、学級を選択して指定する裁量があるとする判例があります。
そのため、一度は学校を訪問して校長と話し合い、自分たちの意思を明確に伝えることが必要
になります。その時期は、早くても良いのですが、就学通知を受け取った時点から始めるのが、
無駄な労力を省くためには適当と思います。
早めに相談しても、実際には学級担任が決まる入学直前にならないと具体的な話にはなりませ
んし、その期間が長くなるほど、市町教育委員会や学校から、養護学校や障害児学級への就学
を促す回数が増えることになります。
保護者の皆さんが、早くから学校側との話し合いを望む理由として、病気がある場合や介助員
を付けてほしいなどという物理的な要望がある場合があります。
ただ、ダウン症のように知的な障害だけの場合は介助員が付くことは少ないようです。また、
介助員が付くことで、他の子ども達との交流が阻害されるという考え方をする人もいます。
協議の場には、出来れば保護者が揃うなど複数で臨みたいものです。
家族の中で十分に話し合
い、普通学級への就学の意志が固いことを示してください。
なお、「平成19年4月1日改正の学校教育法施行令第18条の2及び特別支援教育の推進について
(文部科学省局長通知)」によって、市町教育委員会及び学校は、障害のある児童の就学先の
決定に際して、保護者の意見を聴取することが義務付けられました。
このため学校長に学級を選択する裁量があるとしても、意見の聴取=意見を尊重する必要が
生じたことから、保護者の同意なしに学級を決定することはできなくなりました。
担任の先生との協議
入学式の前には、学級担任となった先生との協議の場も設けていただきます。
この場合に注意したいことは、協議の場に校長か教頭の参加を求めるということです。
担任の先生とだけ話をすれば、学校生活の中で全てが担任の先生の負担になります。
担任の先生の負担を減らすためには、学校全体で見守っていくというスタンスが必要であり、
そのことが長い学校生活を過ごしていくためには不可欠なことなのです。
お互いに信頼できる関係をつくりましょう
私たちは、子ども達にとってどんな教育が良いのかを考えなければなりません。
保護者の希望どおりに就学できても、教室の中で子供が孤立したり、先生から無視されては子
どもが不幸なことになります。
協力できるところは協力し、学校に任せるべきところでは一歩引きながら、お互いに信頼しあ
う関係を築いていくことが大切です。
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15歳からの進路、高校進学について考える
ダウン症の子ども達が、普通の高校に行くということはこれまで夢物語でした。
残念ながら、21世紀を迎えた今日でもその困難さは変わっていません。
ただ、全国的には、公立高校に進学するダウン症の子がいるというもの事実です。
関西や関東におけるダウン症の子どの達の高校進学は、長年にわたって保護者の皆さんが真摯
に取り組まれてきた歴史の積み重ねの結果でもあります。
子どもの将来を考えながら、その可能性を伸ばしていくために、保護者の皆さんは悩みながら
子どもの進路を決めておられます。
普通の高校で得られるもの、養護学校で得られるもの、それぞれ異なります。
3年という時間を有効に使うために、就労体験や自由な活動の場を求めることもあると考えます。
それでも、一度は高校進学について考えてみたいものです。
障害のない兄弟姉妹や友だちが、当たり前のように高校に進学していくのに、学力という大き
な壁によって高校にいけない子ども達がいます。
挑戦しなければ、いかに子ども達が高校から拒絶されているのかを肌で感じることは出来ません。
普通の高校を目指すということ
(定員に満たない高校への挑戦)
他県では、定員に満たない公立高校や定時制を受験して入学している例があります。
例えば、県内の定時制高校では定員に達しない学校が多くあります。
そうした状況の中でも、高校側は不合格にするのか。
これまで挑戦してきた人もいない中では、問題提起すらできていません。
定員内不合格者を出さないことを要求する中で、高校進学を実現していく道も考えられます。
《平成20年3月に高校受験に挑戦したRyota君は、定員内不合格になりました。》
(定員を超える入学希望者のある高校への挑戦)
ほとんどの全日制高校では、定員を超える入学希望者があるため、学力試験という壁が立ちは
だかります。定員に満たない高校もありますが、校長が学校の体面を重んじるあまりに、点数
が低いという理由で不合格者を出す高校もあります。
こうした中で全日制高校への進学を果たすためには、
@ 高校入学が可能な学力を身に付ける。
A 知的障害のある子のための特別枠の創設を働きかける
という方法が考えられますが、高校入試レベルの学力を身に付けるのはほとんど困難です。
また、障害のある子を特別な定員の枠内で入れれば、障害のない子が押し出されるという意見
があります。こうした意見に応えるためには、定員の枠外に特別枠を設けてもらうことが一つ
の方法と考えられます。
制度的に課題が多いという指摘はありますが、過去には、校長の裁量で外国人留学生を受け入
れてきた例があります。定員以上の生徒を受け入れた高校もあります。
柔軟な発想を高校や校長が出来れば、枠外で受け入れることは可能なことなのです。
《平成22年3月に熊本県の高校に挑戦したKeisei君は、合格して高校生になりました。》
養護学校の高等部を選択するということ
養護学校高等部への進学希望者は、現時点では原則全員入学になっています。
その理由のひとつとして、入学の適否を、学力や障害の程度で決めるのか、その判断基準は何かなど、誰も
が納得する基準を決めることが難しいことがあげられます。
このことから、養護学校に進む場合は、入学の難しさよりも、”何を学び、何を得て、何を目指すのか”を
明確な目標として持つことが大切になります。
○ 親元を離れての寄宿舎生活の中で、自立心を身につける
○ 障害のある子達の生活の中で、自分に応じた役割を知る
○ 自立した社会人を目指して、学習や就労訓練に取り組む
ことなども普通学級で学んだ子ども達には、ひとつの環境の変化になります。
高等卒業後は、個別対応をしてくれる人はいなくなります。
そのことを念頭に置き、より具体的に学習内容
や就労のための訓練のあり方に適宜チェックを加えながら、学校に要求し、対応していくことが必要と考えま
す。
なお、養護学校の高等部への進学を希望する場合は、前年の巡回就学相談に申し込むことになります。
就労や自主活動の道
高校や養護学校に進学することが全てではありません。
学歴だけを求めて進学させることは、親の自己満足に過ぎません。また、3年間を過ごす場所を求めているだ
けでは、無為な3年間になってしまいます。
それよりも、その子自身が取り組みたいこと、目指すべきものがあれば、15歳の時から、それに向かって自
立した生活や就労訓練の場を求めることが、本来のあるべき姿だと思います。これは、障害のある子に限ったこ
とではありません。
音楽や絵画、物づくり、音楽などの創造的な活動、そば打ちやパンづくり、野菜づくりなどの生産活動、専門
学校や職業訓練校などでの資格取得、幼稚園や老人ホームなどでの介助体験など、15歳の時から取り組むこと
で身につけられる技術や能力の幅も広がるのではないでしょうか。
成長の過程にある貴重な3年間を無駄にしないという考え方は大切です。
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