第1072回 わたくしの救い 〜如来の名号をいただく〜

 
平成25年 8月8日〜


わたくしたちは、如来の み光のお照らしをこうむって、やっと仏法にあい、
そして真宗の おみのりに あうことができました。
しかし 悲しいことには、如来の光 かがやくおすがたを見たてまつることができません。

それなのにどうして 仏になる因(たね)を いただくことができましょうか。
わたくしは 仏になるべき一つの善も 一つの行も積み重ねることをせず、反対に
まよいの因となる悪い業(おこない)を せっせと積みあげているのです。
このようなわたくしは、どのようにすれば、仏になることができましょうか。

  ところが、このまったく救われようがない わたくしを救わんがために、如来は
本願を立ててくださり、わずか三歳のこどもでも耳に聞き、口にとなえられる
ところの名号をもって このわたくしを救おうとされたのであります。

ながいご修行の結果 「名号を信じ称えるものをかならず仏にする 」 という
第十八願を なしとげられたのであります。

ここに名号は 「正しくわたくしたちが浄土に生まれることを決定する業因(力)
となり、じっとしておらず つねにあらゆる時、あらゆる世界に、その第十八の
本願のとおりに動いて、あらゆる者を 信じせしめ(至心・信楽・欲生我国)、
称えしめ(乃至十念)、わたくしたちをすべて仏にしようと はたらきかけて
いることになります。

すなわち如来は、名号にみずからの光明をはじめとする一切のもっている徳を
のこらず注ぎこまれたのでありますから、名でありながら実は如来そのものに
ほかならず、つねにわたくしたちの身近かにいてくださる 「いきた仏」 なのであります。

この如来は第十七願に 「あらゆる仏がたに わたしの名をほめたたえていただこう」
という誓いを立て、その願いが如来になることによって果たされることとなったのですから、
わたくしがいかなる世界におろうとも、その名号のふしぎなお徳をほめたたえられる

仏がたの説法の声となって、わたくしの耳にひびいてくるのであります。

 釈尊が浄土の三部経を説かれたのは、この名号のおいわれをわたくしたちに
聞かせるためであり、しかもそれをうけ伝えて現在のわたくしの耳にまで届けて
くだされたのは七高僧や親鸞聖人、それから蓮如上人をはじめ、わたくしにこの教えを
伝えてくだされた多くの人々であります。

これらのかたがたのおすすめによって、わたくしが はからいなく名号のおいわれを
聞かせていただいて如来の真実(名号)を わたくしのものとするとき(至心)、
如来のお救いを疑う心や自力のかざり心はすっかりとれてしまい、ただ与えられた
み名のおいわれを喜び楽しむということになります(信楽)。

しかも 「信ずるものを浄土に生まれさせよう」 とう第十八願が成就したことにより、
わたくしの心に如来のお救いを喜ぶ心が おこってくるのでありますから、
そこには当然いずれ浄土に生れて仏になることに まちがいないという心がそなわって
いるのであります(欲生)。

仏の教えを聞きながらも いっこうに仏になりたいとも浄土へ はやく行きたいとも
思いませんが、「わたくしはまちがいなく浄土に生まれ仏にならせていただくのだ」
とうい安堵のおちついた心を持つことになるのであります。

このように人生の荒波に もまれながらも安心立命の境地を現在の心にもつことが
できるとともに、最高のさとりを開くべき因を わたくしのものとして持つことが
できるのであります。
すなわち如来の名号をいただく信心のところに、菩薩でもさえもなかなかもつことの
できない清浄で真実の因を、きたなくいつわりに満ちているわたくしの心のなかに
うえつけられるのであります。

それによって、わたくしはもはやまよいの世界に趣くところの一切の悪い因は
たち切られ、この命が終わるとき如来と同じさとりを開かせていただくのであります。

しかも現実の世において仏になるための一切の因、一切の徳をもたされ、
ただこの生が終われば ただちに仏になるのをまつばかりであるから、菩薩の
最上位の位である等正覚(五十一位)に定まることとなります。

如来の真実をもたされていながら少しも菩薩らしくもないこのわたくしが、ほとんど
仏に等しいという等覚(とうがく)の位に入り、弥勒菩薩と同格ということになるのであります。

仏になることが決定しているなかまに入るので本願では「正定聚」といい、
ふたたびまよいの世界に退くことがないので龍樹菩薩は「不退転」といわれております。

 このように、この世においては大菩薩の位に定められ、次の世においては如来と
ひとしい最高のさとりを開くことができるというのも、「定聚に住し、かならず滅度にいたらずば

正覚をとらないであろう」とお誓いになった第十一願力のおかげであります。

               三木照国師 正信偈入門 浄土真宗を基礎から学ぶ より

 妙念寺電話サービス次回は 815日に新しい内容に変わります。

         


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