権化の仁

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親鸞聖人は、教行信証の最初に

次のようにお書きいただいています。


「 この世にお釈迦さまがお生まれになりました。

 そのお陰で阿弥陀仏の教えが、

 やっと、この私たちの世界にとどく可能性が

 現れたのです。


今から2500年前、お釈迦様がお説教中、

近くの王舎城で、その城の王子、阿闍世太子が、

悪友である提婆達多にそそのかされて、

父親の王さまを殺害しょうとする、

大きな悲劇が起こったのです。

后である韋提希にとって、これほど大きな悲しみはありません。

我が子が夫を殺そうとするのですから。


韋提希夫人は、夫を何とか救おうとして、

息子の阿闍世太子の怒りをかって、

母親である自分自身までが、牢獄に

閉じ込められてしまったのです。


もはやどうにもならない、最悪の状態がおとずれたとき、

韋提希は はじめて、

自らの飾りの総て、見栄や

体裁の一切をかなぐり捨てて、

お釈迦様にこの身の救われんことを希ったのです。



この韋提希に対してお釈迦様は、

韋提希を牢獄から救い出すという方法をとられませんでした。

ただ静かに牢獄の中で、阿弥陀仏の仏法を

淡々と語られるのみだったのです。


もし最悪の場において、その人に真の救いがあるとすれば、

救われたいと希ったその瞬間、

その場において、 その状態で、 しかも無条件で、

永遠に破れない、無上の慶びをその人に

生ぜしめることだからです。



このように見ますと、まさしく浄土の教えの出現は、

浄土から来られた人びとによって示されたことになります。」 と

書いていただいております。



親鸞聖人は、阿弥陀如来の教えを説かれたお釈迦様も、

大きな悲しみの中、お釈迦様に教えを問うた韋提希も、

阿弥陀如来のお浄土からこられた方々であったと味われています。


そればかりではなく、父親を殺してしまった、

この悲劇の張本人である阿闍世や、

そそのかした悪友の提婆達多までも、

仏様の国から来られて、この私のために、

真実の教えが説かれるよう働きかけてくださった方々。

この私のためにご苦労されたのだと、味われています。



2500年前のお釈迦様、そして親鸞聖人や、蓮如上人も、

この私のためにご苦労して、教えを伝えていただいたのです。

お浄土からわざわざ、私のためにおいでくださった方であったと、

味わいたいものです。

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。

次回は、7月30日に新しい内容に変わります。

                      ( 平成10年 7月23日〜 第287回 )