第338回 善悪のふたつ

    (平成11年7月15日〜21日まで)

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。
暑い夏の日ざしの中に働く蟻の姿を見ると、父上の
ことを思い出すと、龍谷大学の前の学長さん、
千葉乗隆先生はおっしゃっています。        
 もう、50年も前のことですが、今、まざまざと
思い起こすと、お書きになっています。

お父さんが、ご門徒の家に仏事のおつとめをして、
お寺に帰ってこられると、炎天下のお寺の
境内を蟻が食べものを求めて右往左往して、
あわただしく働いていました。それを見て、
頂いてきたお菓子をくだいて蟻に与えられました。
喜んだ蟻たちは、さっそくお菓子を巣の方向に
引きずっていきます。お父さんは満足して、
家に入られました。              

しばらくして、蟻が食べ物を運び終えたかどうか
確認に庭にでたところ、そこで見たものは、
なんと地獄絵でした。              

庭に放し飼いしてあったニワトリが来て、蟻
もろともに食べものをついばんでいたのです。
お父さんは蟻のためによいことをしたと思って
いたのですが、それが蟻を死に追いやる結果を
まねいてしまったのです。       

この出来事を話すときに、父上は歎異抄にある
親鸞聖人のお言葉を口にしながら念仏を称え
られたといいます。『善悪のふたつ、総じてもって
存知せざるなり』のところですが、ここでは
現代語訳でご紹介します。             

「何が善であり何が悪であるのか、そのどちらも
わたしはまったく知らない。なぜなら、如来がその
お心で善とお思いになるほどに善を知りつくしたので
あれば、善を知ったといえるでしょうし、また如来が
悪とお思いになるほどに悪を知り尽くしたので
あれば、悪を知ったといえるからである。

しかしながら、わたしどもはあらゆる煩悩をそなえた
凡夫でありこの世は燃えさかる家のようにたちまちに
移り変わる世界であって、すべてはむなしく、
いつわりで、真実と言えるものはなに一つない。  

その中にあって、ただ念仏だけが真実である。」
との親鸞聖人のお言葉を言い、お念仏を     
称えられたといいます。              

何が善で何が悪であるか、煩悩一杯の私たちには、
判断ができません。その中で、お念仏だけが真実で
あるとの親鸞聖人のお言葉をかみしめながら
南無阿弥陀仏とお念仏の生活をさせていただきたい
ものです。
妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、7月22日に新しい内容に変わります。
(大乗 七月号を参考)