第370回 一度きり

      平成12年2月 24日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
まだまだ寒い日がつづきますが、日に日に春が訪れているようです。
木の芽もだいぶ膨らんできましたし、雑草はもう頭を出し始めました。
生物は、ちゃんと春を感じているようです。

 さて、3月の法話カレンダーには、大阪の榎本栄一さんの言葉で

「 再び通らぬ 一度きりの尊い道を いま歩いている 」

とあります。

榎本栄一さんは、一昨年亡くなられた方ですが、若いころから
詩を書いてこられ、途中20年ほど中断されたものの、再び60歳を
超えて書きはじめ、その詩集は、7冊を数えているそうです。

仏教語をあまり使わずに、念仏の味わいを詩に書きつづられています。
数多くの詩の中から選ばれたのが、3月の「今月の言葉」です。

榎本栄一さんの詩には、「道 」という言葉が多く書かれています。

その一つには、

「 この道 平坦ではありません ふみはずしましたが
  気がつけば ここも仏の道でございました 」

たった一度きりの人生、その行き先が分からず、ただ快楽を追い求め、
当てにはならない地位や名誉や財産を求めている人とは違って、
お念仏に出会われた榎本栄一さんには、行き先がはっきり見え、
方向が定まっています。
すべてを如来さまにおまかせすればよいのだ、
今の一瞬に全力を注いで生きることの喜びに気づいておられます。

生活とお念仏が一つになっている、生活しながら仏法を聞かれた方の
言葉です。

お経の言葉でよく知られている言葉に

「 高原の陸地(ろくじ)には 蓮(はちす)を生ぜず、
  卑湿(ひっしゅう)の淤泥(おでい)に蓮を生ず 」があります。

蓮華はきれいな砂地には生えないで、泥の中に美しい花を咲かせます。
そして、重要なことは、汚れた泥に染まらずに、花を咲かせることです。

美しく咲く蓮華の花と榎本栄一さんの姿が重なるように感じられます。

「 再び通らぬ 一度きりの尊い道を いま歩いている 」

仏に成らせていただく身を喜び、お念仏の毎日でありたいものです。

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、3月2日に新しい内容に変わります。

本願寺出版社 仏とともに  ー月々のことばー(平成12年)
        大田利生師著を参照