第556回 一冊の本なら

 平成15年 9月 18日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。
いよいよ一年後には、妙念寺が担当する佐賀組の巡番報恩講を
迎えることになりました。


平成16年の9月15日〜19日までの五日間です。
ご講師には、前回と同じく大阪の豊島学由先生にお願いしています。

その豊島先生の新しい本が手に入りました。
歎異抄一人一話という本です。

大阪の津村別院のテレホン法話の原稿を本にしていただいたものです。     
その中から、今回は司馬遼太郎さんのお話を紹介させていただきます。

「本願寺に所蔵されている「歎異抄」蓮如書写本が国の重要文化財に
指定されたと報じられた同じ「本願寺新報」の記事に「無人島に
一冊の本を持っていくとしたら何を持っていくか」という話題になったとき、
司馬遼太郎さんが「歎異抄」と答えたというエピソードが紹介されています。


司馬遼太郎さんご自身の語るところによりますと、「私は学校の途中で
兵隊にとられたとき、文庫本の「歎異抄」を持って行った。
生死の事に安らぎを得るだろうと思ってのことだったが、かならずしも
予期したような結果はもたらされなかった。


 中世文学の事情から考えて「歎異抄」はひたすら朗読すべきで、
黙読しては何もわからないとう体験をしたが、「歎異抄」を朗読するうちに、
目で知ろうとするはからいが消えて、それにかわって行間に充満している
何事かが、いきいきと聞こえてくるような感じがした。


目で読んでいた頃は、すぐれた文章を論理で書かれた死についての
安心の書であろうと思っていたが、声を出して読むうちに、親鸞聖人の
あのたくましげな肉声をきく思いがし、ついには生命のよろこびのような
感じがした」と。


そこには、いま何度読みかえしても、読みかえすごとに、そのつど
戦慄をおぼえるほどの新鮮さがあると語っておられました。


来年、妙念寺の巡番報恩講においでいただく、豊島学由先生の
歎異抄一人一話を、ご紹介しました。


妙念寺電話サービス次回は、9月25日に新しい内容に変わります。