第626回 鎌倉時代の四人の開祖

 
平成17年 1月20日~

 こんな文章に出会いました。

親鸞聖人と同じ時代に活躍された鎌倉の四人の開祖の方がたについて、

春夏秋冬の四季に分けて味わっておられた方がありました。

そこで私なりに、そのお四方の人となりについて考えて
みたことであります。

道元禅師こそ 冬の聖者(1200 1253 ) にふさわしい方では
ないでしょうか。

国家や貴族などの権力を嫌って、雪深い福井の山里の永平寺で、
高潔無比の生活のなかに ひたすら修行研讃されました。

 また、日蓮上人こそ夏の聖者(1222 ~ 1282 ) にふさわしい方では
ないでしょうか。

法華経』 こそ真実の教えであるとして、南無妙法蓮華経の題目を

唱えることこそ、末法の衆生の救われる道であると主張し、他のものを
すべて切り捨てられた激しく情熱的な性格の持ち主であります。

 そして、親鸞聖人の恩師・法然上人こそ、春の聖者(1133~ 1212 )

ふさわしい方ではないでしょうか。あたかも春のひかりのように、
すべての人びとを暖かく包容し、一人ひとりの悩みに耳を傾けて、
もっばら阿弥陀仏の本願念仏の救いを説いていかれました。

最後に、浄土真宗をお開きくださいました親鸞聖人は、秋の聖者
1173~ 1262 )と呼ばれるにふさわしいお方ではないでしょうか。

静かに人生を思い、自己を深く内省しながら、そこに汲めども尽きぬ
仏の大慈・大悲の心を仰ぎ、恩師・法然上人の御恩をしのび、御恩を
よろこんで、上人のみ教えの伝道に生涯を尽くされ、ただお念仏のなかで
静かに往生されました。

私は鎌倉の四人の祖師方の人となりや、教え・主張の違いを詳しく
うかがってみますとき、おんとし90 歳までも生きぬかれた親鸞聖人の
宗教観が、あらためて有り難く知らされる
思いがいたします。

もしも、道元禅師や日蓮上人のお二人の祖師方が、体力や気力が十分な
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歳や、60 歳そこそこではなくて、法然上人や親鸞聖人のように、
80 歳・90 歳までも 長生きせられたならば、その教えもずいぶんお変わりに
なられたのではなかったか、と拝察いたします。

 まさに人生は、新しいいのちの誕生のよろこびにあふれる春、いのちを謳歌し
清熱をほとばしらせる夏、そして静かに自然に還っていく冬だけではありません。
私はこの人生に衰えとあきらめと、しかし静かなる「めざめの秋」
「熟成の秋」
があるところに、人生のはばがあり、深さがあるのではないかと、
受け止めさせていただいたことであります。

    日野和憲師
(中央仏教学院 通信教育部長)

次回は 1月27日に新しい内容に変わります。