第631回 宗祖750回大遠忌

 平成17年 2月24日〜

 よく「五十回忌が終わると もう終わりですね」と おっしゃる方があります。
しかし、浄土真宗では 宗祖親鸞聖人の年忌を50年ごとに行い、
平成二十四年には 大遠忌をお勤めいたします。
そのためのご消息が 今年のご正忌報恩講の初日 発布されました。
少々 いつもと違い長いようですが、ぜひお味わいください。


平成二十四年一月十六日は、宗祖親鸞聖人の七百五十回忌にあたります。
本願寺では、ご修復を終えた御影堂において、親鸞聖人七百五十回大遠忌法要を
平成二十三年四月よりお勤めすることになりました。

このご勝縁に、聖人のご苦労をしのび、お徳を讃えるとともに、浄土真宗のみ教えを
深く受けとめ、混迷の時代を導く灯火として、広く伝わるよう努めたいと思います。

親鸞聖人は承安三年に御誕生になり、九歳で出家得度され、比叡山で学問と修行に
励まれました。しかし、迷いを離れる道を見いだすことができず、二十九歳の時、
聖徳太子の示現を得て、源空聖人に遇われ、本願を信じ、念仏する身となられました。

三十五歳の時、承元の法難により、越後にご流罪となられますが、後にはご家族を伴って
関東に移り、人びとと生活をともにし、自信教人信の道を歩まれました。

晩年は京都で、ご本典の完成に努められるとともに、三帖和讃など多くの著述に
お力を注がれ、九十歳を一期として往生の素懐を遂げられました。

親鸞聖人によって開かれた浄土真宗は、あらゆる人びとが、阿弥陀如来の本願力によって、
往生成仏し、この世に還って迷えるものを救うためにはたらくという教えです。
南無阿弥陀仏の名号を聞信するところに往生が定まり、報恩感謝の思いから、如来のお徳を
讃える称名念仏の日 々 を過ごさせていただくのです。


 仏教の説く縁起の道理が示すように、地球上のあらゆる生物非生物は密接に繋がりを
持っています。
ところが今日では、人間中心の考えがいよいよ強まり、一部の人びとの利益追求が
極端なまでに拡大され、世界的な格差を生じ、人類のみならず、さまざまな生物の存続が
危うくなっています。

さらに、急激な社会の変化で、一人ひとりのいのちの根本が揺らいでいるように思われます。
私たちは世の流れに惑わされ、自ら迷いの人生を送っていることを忘れがちではないでしょうか。

お念仏の人生とは、阿弥陀如来の智慧と慈悲とに照らされ包まれ、いのちあるものが敬い合い
支え合って、往生浄土の道を歩むことであります。如来の智慧によって、争いの原因が
人間の自己中心性にあることに気付かされ、心豊かに生きることのできる世の中、平和な世界を
築くために貢献したいと思います。

私たちの先人は、厳しい時代にも、宗祖を敬慕し、聴聞に励まれ、愛山護怯の思いとともに、
助け合ってこられました。この良き伝統を受け継がなければなりません。

しかしながら、今日、宗門を概観しますと、布教や儀礼と生活との間に隔たりが大きくなり、
寺院の活動には門信徒が参加しにくく、また急激な人口の移動や世代の交替にも対応が
困難になっています。

宗門では、このたびのご法要を機縁として、長期にわたる諸計画が立てられ、広く浄土真宗が
伝わるよう取り組むことになっています。
七百回大遠忌に際して始められた門信徒会運動、重要な課題である同朋運動の精神を受け継ぎ、
現代社会に応える宗門を築きたいと思います。

そのためには、人びとの悩みや思いを受けとめ共有する広い心を養い、互いに支え合う組織を育て、
み教えを伝えなければなりません。あわせて、時代に即応した組織機構の改革も必要であります。

それとともに、各寺各地で勤められる大遠忌法要を契機に、その地に適した寺院活動や門信徒の
活動を、地域社会との交流を、そして、寺院活動の及ばない地域では、一層創意工夫をこらした
活動を進めてくださるよう念願しております。

宗門の総合的な活動の新たな始まりとして、皆様の積極的なご協賛ご協力ご参加を心より期待いたします。

平成17年 2005年 1月9日  龍谷門主 釈即如



以上がこの度のご消息です。親鸞聖人が開かれた浄土真宗のみ教えがわかり易く、
また仏教の基本を丁寧に述べていただいています。
声を出してお読みいただくと、尚一層ありがたく感じられものです。
次回は 3月3日に新しい内容に変わります。