第647回 残された犬とともに

 平成17年 6月16日 〜

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春先の地震以来、また揺れています。
本堂もミシミシ、二階にあるコンピュータのモニターもゆらゆらと揺れています。
原因は、お隣の家を壊すために、大型のパワーショベルカーが作業をして
いるためです。


緑多く、池もあった立派な庭付きの二階建てのお宅でしたが、お母さんが
亡くなられたあと、しばらく空き家になっていました


お子さんたちは、福岡にそれぞれ居を構え、誰も住むことがなくなり、
飼い犬だけが近所の方のお世話で、お留守番をしていました。

元気だったころこのワンちゃんは、夜中、家の前を通る人に突然大声で
吼えて、驚かせていましたが、もうすっかりおとなしくなっています。


亡くなられたお母さんは、浄土真宗の家に生まれ禅宗の家に嫁がれましたが、
お寺の近くと言うことでもあり、私どもの仏教婦人会にも加わっていただいた方でした。


亡くなられる年の正月に、お参りになって、子供たちのことを、よろしく
お願いしますねと、おっしゃったことを、印象深く覚えています。


離れて住むお子さんたちは、この家をそのままに放置しておくわけにもいかず、
兄弟で話し合い、さら地にしてしまうことになったそうです。


 いつも目にしていたお隣の家が、大きな機械の爪でバシャバシャと、
つぶされていく姿は、とても悲しいものです。


ご両親が孫やひ孫の代まで住めるようにと、思いを込めて建てられた家も、
あっけなく壊されていくものです。

大きな緑の木も、一息に引き抜かれ、みるみる何も無くなってしまいます。

形あるものはいつかは無くなると思いながら、見慣れた風景が目の前から
消えていくことに、やはり思いはひとしおです。


「子供のことをよろしく」と言われても、お母さんだけとのご縁で、
ご門徒でないお宅のお子様たちとは、お目にかかる機会はありません。


お母さんがお聞きになっていたお念仏の教えを、喜びをお伝え出来ないことの、
もどかしさを感じます。

形は無くなっても、教えは伝わると思いながら、月忌や年忌でお会い出来ないと、
なかなかチャンスは少ないものです。


いかに儀式というものが大事であるかが、つくづく分かってきました。

主たちがいなくなって、飼い犬が取り残され、お寺で預かることになりましたが、
犬にはお念仏は聞こえるものの、お母さんは本当は孫や子へ伝えたかったの
だろうと、思います。


せめて吼える犬とともに、お子さんやお孫さんに仏縁があるように、
お念仏が届くように、南无阿弥陀仏を口にしたいと思います。


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次回は、6月23日に新しい内容に変わります。