第661回 わが師の恩

 
平成17年 9月22日 〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。

ところで、数年前、「世界で一つだけの花」という歌が大評判になり、
卒業式の時にみんなで歌う学校が多かったといいます。


今年の卒業式は、ことによると「仰げば尊し」が、聞こえてくるのかも
しれません。


昔の感覚ですと、卒業式には送る側が、「蛍の光」、送られる側が
「仰げば尊し」を歌うのが定番でした。

ところが、近ごろは、卒業生が自分たちで好きな歌を選んで歌うことが、
常識となっているようです。


旅立ちの歌のようなものとか、友達の歌とか、その年に流行った歌や、
子供たちに人気の感動的な歌が歌われているようです。


どうして、「仰げば尊し」が歌われなくなったのかといえば。
その歌詞の中に、先生への恩、感謝を強要しているような言葉、
立身出世を望むような言葉があること、歌詞全体が難しく、人気が
なかったようです。


「世界で一つだけの花」は、一番に成らなくても、個性的であることの
良さを歌われており、子供たち先生、父兄にとっても共通して
喜ばれた歌の一つだったのでしょう。


そのきっかけは、学園を舞台とした連続TVドラマの挿入歌だったためです。

 先日終わった、女王のように横暴な先生が登場する学園ドラマで
「仰げば尊し」を子供たちが自発的に、歌う場面がクライマックスの
番組を見ました。


冷酷で、すぐに怒り出し、連帯責任で処罰する、鬼のような先生です。
数十年前は当たり前だった、とても怖いイヤな先生です。


子供たちも父兄も反発し、ついに学校を追われてしまいます。

しかし、この先生に反発することで、遅刻する子供や、忘れ物をする
子供は無くなり、給食で嫌いな食べ物を残すこともなく、真剣に授業を
受けることが出来る素晴らしいクラスに変わっていきました。


表面的に見れば、横暴で、子供たちを虐待しているように見えて
いたものの、実は子供のことを真剣に考え、目先のことではなく、
10年後20年後に、子供たちがあの先生のお陰だったと思えるようにとの、
努力だったことが、最後には分かります。


卒業式の日に、式場から抜け出してきた子供たちが心から、
「仰げば尊し、我が師の恩」と、嫌いでしかたがなかった先生に向かって、
涙ながらに歌うところがとても感動的でした。

今現在、評判が良く、子供たちに人気がある先生だけが本当に
良い先生なのか。


憎まれて嫌われても、子供の将来のことを真剣に考えてくれる先生が
本物で立派な先生ではないのかと、問いかける異色のTVドラマでした。


これを見ていた子供たちは、今年の卒業式に、この「仰げば尊し」を
選び、どれだけの学校で歌うことでしょうか。楽しみです。


ところで、浄土真宗は報恩の教えです。

如来大悲の恩徳は 身を粉にしても 報ずべし 師主知識の恩徳も 
骨を砕きても謝すべし


という親鸞聖人のご和讚を、よく歌う宗教です。

恩というのは、私の生き方が、考え方が、行動が変わって始めて
感じられるもの。

子供たちが素直に「仰げば尊し」が歌えたように、心から、恩徳讃が
歌えるようになりたいものです。


如来の大悲やご苦労いただいた親鸞聖人、そしてこの私に伝えて
くださった、多くの先輩のお陰であったと、心から思えるような、
そんなお念仏の生活を送りたいものです。


妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、9月29日に新しい内容にかわります。