第678回 どんな苦しみでも

 平成18年 1月 19日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。

世の中便利になったもので、京都西本願寺での親鸞聖人、ご正忌報恩講の模様が、
同じ時間に インターネットで見ることが出来るようになっていました。

1月15日夜から16日朝にかけて、夜通しの通夜布教の様子も、中継されていました。

その中で、北海道の山口依乗さんという女性の布教使さんが、お話しいただいたのが
大変感動的でした。


日頃は、カウセリングをしているという方ですが、「話す」ということは、「離す、放す」に
通じるもの、私の思いを受け取ってくださいと、ご自分の体験を話し始められました。


ご両親共に、お寺の出身だったものの、お父さんはサラリーマンで、ご夫婦そろって、
お聴聞が大好きだったといいます。


じっくりとお聴聞をしたいと、定年より早く55歳で退職して門徒推進員になられました。
ところが、こともあろうに、全身の筋肉が動かなくなる難病にかかり、人工呼吸器を付け
寝たきりの状態になってしまわれました。


動くのは、辛うじて片方の手だけでしたが、人工呼吸器を無意識に外す可能性があるので、
夜の間は、包帯でベッドに縛り付けなければならなかったといいます。


会社に出掛ける前に、朝早く病院に行き、その包帯をほどき朝のあいさつをし、
お母さんに引き継ぐのが山口さんの日課でした。  


言葉が出なくなったお父さんは、看護婦さんが身体を拭いたり、下の世話をしてくれると、
その動く片手で、拝んでおられたことを、後で知られたといいます。


身体中に管を巻き付けたお父さんがあまりにも不憫で、楽にしてあげようと、
何度も器械のスイッチを切ってあげようと、迷ったといいます。


縁あってお嬢さんの山口さんが、僧侶に成ることになり、京都へ出掛けている間に、
6年間の闘病生活を終わり、亡くなられました。


ところが、今度はお嬢さんに同じ難病の可能性が出て来て、定期的な検査が
必要になってきました。


お父さんの姿を見続けていたので、主治医に思い切って聞いたといいます。

積極的な治療をしなければ、どれだけ生きることができますかと、それに対して、
これはお父さんからもらった手紙だと、不自由な手で、父親が書いた手紙を
見せられました。


「どんな苦しみにも耐えますから、可能性のある薬が出来たら、私の身体で
実験してください。後に続く患者のために、早く治療薬を見つけて下さい」と、
先生宛ての手紙でした。 自分は、苦しみたくない早く楽になりたいと思ったのに、
お聴聞をしていた父は、自分の身体を投げ出して、あとに続く患者のために、
どんな苦しみでも耐えますという言葉に、涙が出てきたといいます。・・・



このお話しを聞きながら、仏さまは、自分は苦しんでも多くの人を救うために働くもの、
お聴聞を続けられた人は、その仏の心に 近づいていくのだと感動しました。


気づかないだけで、私の周りにはこうした、有り難い方が沢山いらっしゃるのでしょう。

南无阿弥陀仏のお念仏は、この私を仏の仲間にしていただく言葉、力強い有り難い
報恩の働きを、呼び覚ます声だと味わえました。


妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、1月26日に新しい内容に変わります。