第701回 預かりもの

平成18年 6月 29日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。

田植えの時期は、だいたい決まっていると思っていましたが、気候の関係で
今年は、一週間から十日、遅くするよう決まったようです。


農家にとって最も大事なものは種籾だろうと思っていましたが、いまは地域特産の
銘柄に統一するために、個人で保存したものは使ってはいけない決まりだということです。


親から子どもへ、孫へと受け継いで来た技術や知恵を、誰でも間違いなく最高のものに
するため専門家が検討して、地域全体へ指導していくのが現代のようです。


 昔は、農地も山林も畑も、先祖から受け継いだ大事な預かりもの、それを次の世代に
残していくという発想があったように思います。
土地を肥やして良い田圃にして、受け継いだ大事な種籾を次の世代へ渡す。


百年後の孫たちのために、山に木を植え、手入れをして残していく。
ところが、その山林も手入れが大変で、採算が取れないために放置されている所が
多いと聞きます。


この土地もこの山も預かり物、自分の物というより、預かっているもの。
同じように、この家も、自分の身体も、子どもまでも預かり物、自分だけの物ではなく、
公のものを、いま預かっているという気持ちがあったように思います。


一人はみんなのために、みんなは一人のために助け合って、協力して生きていく。
リーダーは、自分のことよりも、より多くの人のために努力する。
そのリーダーをみんなで支えていく。
こうしたことで、世の中は動いて来たように思います。


しかし、今、公よりも個人を優先する風潮が感じられてなりません。



ところで、南无阿弥陀仏は、報恩感謝のお念仏です。
南无阿弥陀仏を、口にする生活を先輩たちが残し、伝えてくれたのは、自分一人で、
自分の都合だけで、自分一代ではなく、長い時間、多くの力に生かされていること、
そのことを感じ味わわせ、いま自分は何をすればよいのか。何をお返し、何を伝え
残していくのか。各人にしっかりと考えさせるために伝えていただいた言葉であったと
思えます。


誰かに命令されるのではなく、誰かの後についていくのではなく、それぞれが、自分は
何が出来るのか、自分はどうゆうことで感謝を表すのか。
役割を果たすのかを考えさせる。


それがお念仏の教えの一つの願いだったと思います。

気づいてみれば、もっともっと喜び、もっともっと感謝して。
もっともっとお返しすることが、自分が果たす役割があることを、気づかせ教え、
働かしていく。


それが生きがいであり、喜びであり、勤めであろうと思います。
自分だけの身体ではなく、預かりもののこの身体で、自分が出来ることを考えて、
実践していきたいと思います。


そして南无阿弥陀仏も、私がいま預かっている大事な宝物、つぎの世代へ間違いなく
残し伝えていきたいものです。


それこそが、次の世代へのもっとも大きな贈り物だと思います。

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、7月6日に新しい内容に変わります。