第715回 ある遺書

 
平成18年 10月5日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。
こんな文章に出合いました。

村上速水先生の「道をたずねて」という本の中の「聞法と人生」というところに、
こんな遺書が掲載されていました。


葬式がすんだ直後に見せてもらったものだといいますが、元気な時に書かれた
お祖母ちゃんの遺書です。


亡ならた後、家族の方がお内仏のお掃除をしていて、その引き出しに入っていたのを、
発見されたといいます。


毛筆で念を入れて、一字一字ていねいに書かれていたのは、
次のような文だったといいます。



昭和三十六年一月二日大雪の朝
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏、はい、有り難うございます。
博ちゃん、父ちゃん、昌ちゃん、母ちゃん、和枝ちゃん、深いご縁で親となり、
子となり、孫となり、ほんとうに有り難うございました。


私は世界一の幸福者でございました。どうか南無阿弥陀仏の御いわれを、
よくよく念を入れて度々重ねて聴聞して下さい。


御聞かせにあずかりますと、我が身の浅ましい事や、広大無辺の有り難い
御慈悲の程がわからせて頂きます。


ただ一通りの聞きようでは、ほんとうの御仏様の御慈悲の程はわかるものではありません。
聞いて聞いて、かみしめ、かみしめ、よく味わいの出るまで聞いて下さい。

一つ一つの御誓願も、みな私のためと思いますれば、有り難くて、よろこんで
お参りさせて頂きます。

どうか子々孫々、耳の聞こえる内、目の見える内、足の達者な内、
御恩報謝の御念仏生活にいそしんで下さい。殊にお寺の御せわは家族揃って、
力を合わせてよろこんでして下さいね。たのみます。

私は業(ごう)によってどんな死様をするか知りませんけれども、此のまま
お浄土へまいらせて頂きます事を楽しみによろこばせて頂いていますから、
御安心下さいね。御頼みいたします。御頼みいたします。

南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏           合掌  
                                  七十一歳 中釜エダ

という有り難い遺言状です。

一番大事な、子どもや孫のことを思い、元気な時に、書かれたお手紙です。
私たちも、子どもや孫へ、こうした手紙を書いておくと、多くの素晴らしい財産よりも、
もっともっと価値のある、宝物となるのではないでしょうか。


妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。
次回は、10月12日に新しい内容に変わります。
    
  教育新潮社発行 現代真宗名講演全集 
              親鸞聖人生誕八〇〇年記念出版   39より