第724回 伝統の意味
平成18年 12月 7日〜
妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
NHKの夜の番組で、ドキュメント72時間という番組がこの秋から
スタートしています。一カ所を72時間連続して取材するもので、タクシーの
運転手さんと同行したり、花火大会の地元など日頃、私たちが一瞬のうちに
通り過ぎてしまうところに、長時間じっくりと居座って取材する番組です。
この番組で、埼玉にあるイスラム教の教会、モスクを紹介していました。
イスラム教独特の高い塔や丸い建物ではなく、住宅地にある平凡な三階建ての
ビルの中に、そのモスクはあります。
世界各国から日本に来ているイスラム教の人びとが集まって礼拝するところで、
150人ぐらいが入れる広さがあり、一面にジュウタンが引き積めてあります。
日本には今、7万人のイスラム信者がいるということですが、一日、5回メッカの
方を向いて、きれいに並んでひざまずき、頭を地に着けてお祈りをしていました。
ちょうどラマダンという断食の期間で、太陽の出ている間は一切食事をしない
一カ月間の大切な宗教行事の最後の三日間の記録です。
この一カ月、男たちは、このモスクでお祈りをした後、自分たちで作った夕食を
一緒にして、宗教上お酒を飲めませんが、それでも仲間どうしが楽しく
交流していました。
日本語を話せる人が多いようで、その中の一人の自宅にも訪ねました。
奥さんは日本人で、子ども二人います。
他の宗教の人とは結婚出来ないということで、この奥さんもイスラム教だといいます。
日本の学校に通う子どもたちに、イスラムの習慣を教えるのは大変のようですが、
生活の中に宗教が生きていることがうかがえました。
日本人が忘れてしまった人間として大事なことをちゃんと伝え、守っていこうとする
姿勢がそこにはありました。
ラマダンの断食も、豊かさの中で、ものの大事さを取り戻すためには意味のある
ことでしょうが、日本人も一昔前までは、親の命日や報恩講のときには、
精進料理にして、魚や肉などの生き物を食べないことを、当たり前としていましたし、
家族揃っての食事という風習も、現在、だんだんと忘れられ、子どもたちだけで
食事をするのが普通となってしまったようです。
一日に一回だけでも、家族揃って食事をし、親と子の触れ合いを持つことの
大事さが今叫ばれています。
経済的な豊かさも大事なことですが、人間が人間らしく、ともに生活していくためには、
何が本当に大事なことか、もう一度考えてみる必要があることを、この番組は
教えてくれました。
次の世代へ伝えておく必要なものは いったい何なのか、改めて考えて
みたいと思います。
妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、12月14日に新しい内容に変わります。