第791回 順調は プラスか

 平成20年 3月 20日〜

妙念寺電話サービス お電話ありがとうございました。

テレビのドキメンタリー番組で 定時制の高校を紹介していました。
私立高校は 経費負担が重いので 公立の高校の受験者が増え、夜間の定時制も
年々生徒数は増えているということです。

密着しての取材、可愛いお嬢さんが笑顔で答えていました。
お父さんの会社が倒産して 女子大へ行っていたお姉さんは学校を止め 自分も
アルバイトをしながらでないと 高校進学はできなかったと。

また 男の子は 昼間のアルバイトでは時間給が安く 夜 10時から朝6時までの
仕事をしている、3年生になって就職だが 今の給料を出してくれる採用先はないと
笑いながらいっていました。

大学へ行きたいと 少しずつ貯金しているという女生徒や 母子家庭で母親を安心させたい
ので、安定した就職先を探しているなどなど、大人に任せっきりではなく、自分の力で
生きている子供たちのたくましい姿をみることができました。



 日曜日の法要では 70歳過ぎたご長男が 97歳の母親をはじめ 多くの親戚の前で
思いを述べられました。
父親の17回忌。 台湾から引き揚げてきた父は 妹の嫁ぎ先に
 年老いた両親や 
自分たち子供をあずけて 炭鉱で仕事をしていたそうです。


やがて 警察官に採用され生活は 少しは安定したものの 当時は健康保険が充実して
おらず 年老いた両親の病院代の負担は 想像以上に大きく 父も母も大変苦労した
ようです。


 ある時 父親の友人が こんなことを教えてくれたといいます。
お前の父親はとても優秀な人だった 軍隊では大尉まで昇進し、指揮官としての能力は
充分あるので、昇進試験を受けさえすれば 間違いなく偉くなるのに
 昇進して転勤する
わけにはいかない、このままでいいと 仕事一筋だった。


お親父さんは 君たち兄弟を育てるためだけに、 頑張った偉い人だったよ、
とても自分たちには真似ができない立派な人だったと。

今 その方の言葉を思い出し やっと父親のことが ありがたく思える年になりました。
そして親戚のみなさま 本当にお世話になりましたと ありがとうございましたと、
挨拶をされました。


 今 大人たちは 自分が若い時に苦労したので 子供たちには苦労させたくないと 
先手 先手で、転ばぬよう怪我をしないよう、お腹が空かないように 計らっていくので
多くの子供たちは 苦労知らずに育ってしまったようです。


しかし、わがままが言いたくても 言えない 理想や夢をあきらめなくてはならない
子供たちが増えていることを 幼い顔で 力の限り生きていこうとする姿を見せられると
胸が熱くなってきます。
私たちも自分のこれまでの多くのご縁を思い起こして、もっともっと感謝していいこと
ばかりだったのに 感動もなく当たり前になっていたと 反省させられます。


何事もなく 問題もなく順調に進むことを 望んでいますが 本当は 大きな問題に
立ち向かい それを乗り越えることほど 人生の意味があり 喜びは多いのではないかと
思います。



  親鸞聖人のご一生をしのばせていただいても 苦難の連続だったと思われます。
その中で 恩師法然上人との出あい、念仏禁止と越後への流罪、関東でのご布教
都へ戻られてまとめていただいた数々の書物、ご長男の義絶 などなど
お念仏に生きられ 私たちにもお勧めいただいているのです。

どうも 私たちは  目先の順調さだけを求めて 生きているようです。

もし、この春 希望がかなわなかった人は そのご縁をばねにして 新たな人生を
歩んでほしいと思います。


もし 思い通りに春を迎えられた人は この順調さは 自分にとっては プラスと
いうより、マイナスになるのではないかと 気を引き締めて 引き続き 努力して
ほしいものです。


 人の喜びや悲しみが感じられる人間に育ってほしいとの仏さまの願いを 忘れずに
老いも若きも 新たな気持ちで 春スタートしたいものです。

妙念寺 電話サービス お電話ありがとうございました。
次回は 3月27日に新しい内容に変わります。


         


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