やさしさに包まれて/side A
    「下り最終列車が発車いたします。お乗り遅れのないようにご注意下さい…」  ピルルルルル…  ぷしゅー カタン… カタン…   最終列車がホームを離れてゆく。駅のホームは明るく照らされていたが、街は夜のとばりに すっぽりと包まれており、しんしんとした寒さの中にあった。 ちらちらと雪も舞っている。オレは体をすくめてコートの前を合わせた。 マルチと二人で旅行にでかけたはいいが、大雪でダイヤが乱れ、6時間遅れでようやく帰ってきたのである。 「ふーっ、やれやれ…なんとか帰って来れたなー。ううっ、寒いぜー。マルチ、疲れてねーか?」 「はい。わたしはへっちゃらですー。浩之さんは大丈夫ですか?」 「いやー、けっこう疲れたぜ。帰ってあったかくしてソッコーで寝ちまおうぜ。」 「ふふっ。そうですね。今夜は浩之さんが眠ってしまわれるまで、ゆっくりマッサージしてさしあげますからね。」 「おう、頼むわ。って言っても、オレ、すぐ寝ちまうと思うけどなー。」 「ふふっ。そうかもしれませんね。」    きゅっ… マルチがオレの手を握ってくる。赤のダッフルコートにふかふかのマフラー。 いつ見ても可愛い姿だ。二人でじっくり品定めした価値があったというもんだぜ。 「マルチ、そのコートよく似合ってるなー。」 「うふっ、嬉しいですー。浩之さんに買ってもらったコートですから、わたしの大好きなお洋服ですー。 このマフラーもとってもあたたかいです。」  そんな話をしている時、オレはホームの先の方に人影が見えることに気づいた。照明はあるが あまり明るくはないため、スカートのシルエットから女性であることが推測できる程度である。 変だな、もう最終列車が発車したのに…、と思った瞬間、その人影がオレの視界から消えた 「やべっ!」  なんとその人影は身を翻すといきなり線路の上に飛び降りたのだ。 「あっ!浩之さん?」  ダダダッ…  あわててオレはその場に駆け寄り、線路をのぞいて声をかける。 「おいっ、大丈夫か?」  マルチも駆け寄ってくる。 「…はあ、はあ、どうしたんですかー?」 「はい? なんのご用件でしょうか?」  線路上にしゃがみ込んでいたその人影は、オレたちの方を振り向いて丁寧な返事を返してきた。  …その人影は人間ではなかった。頭の両脇からのぞく特徴のあるセンサー、緑の瞳…  彼女は来栖川エレクトロニクス製メイドロボ、HM-12型であった。  そして彼女はその手に何本かの吸い殻を持っており、反対の手にはバケツを持っていた。どうやら、 線路上の吸い殻を拾っていたようだ。 「あ、いや… こんな時間に仕事?」 「はい。わたくしは当駅管理部に配置されておりますので、最終電車終了後線路の清掃をすることに なっております。……ご用がないのでしたら、業務を継続してよろしいでしょうか?」 「あ、ああ… じゃまして悪かったな。」 「いいえ。お声をかけていただきありがとうございました。これからも当駅をご利用下さいますよう お願いいたします。」  ぺこ… そのメイドロボはオレたちに向かって深々と頭を下げた。  彼女が着ているのはHM-12型に最初から与えられているお仕着せのメイド服のようだった。 「ようだった」というのは一つには照明が線路上まで十分届いていないこともあるが、それ以上に 彼女が着ているものがひどい状態であったからである。エプロンドレス風の衣服はあちこちが破れて汚れている。 もとの色が判然としないほどだ。HM-12型の髪は緑色のはずだが、埃でくすんでいるのだろうか、 とても緑色には見えない。  そのHM-12はそのまま腰を曲げて線路上のゴミ拾いを再開した。その背に、髪に白い雪が落ちる。 冷たい風は彼女のぼろぼろのメイド服の裾を揺すり、むき出しになった手足をなぶるように吹きすぎてゆく…。 「………」  マルチは凍り付いたようにそのHM-12を見つめたままでその場に立ち竦んでいた。 「…マルチ。」  あたたかなコートとマフラーに身を包んだマルチは、オレの言葉にはっとしたように顔を上げると、 HM-12の方に体をかがめて声をかける。 「あ…。あの…」    彼女はゆっくりと振り向いた。その動作はオレの目にもややぎこちなさを感じさせる動きであった。 …おそらく十分なメンテナンスをうけていないのだろう。 「はい。なんでございましょうか。本日の運転は上下線ともすでに終了いたしております。 改札へは地下通路をお通り下さいませ。」 「あの… 寒くないですか? 大変でしょうけど、…がんばってね。お名前、教えてくれますか?」 「お心遣いありがとうございます。わたくしは来栖川エレクトロニクス製メイドロボHM-12型でございます。 名前というようなものは特にございません。製造番号は10037です。」 「そう…。…あの、ちゃんと充電できてますか? ちょっとジョイントが傷んでるんじゃないですか?」 「はい。充電器の電圧が合致しておりませんのでバッテリーの消耗は大きくなっております。 摩耗により駆動部に不具合もございますが、業務に支障はございません。 …では、業務がございますので、失礼いたします。おやすみなさいませ。」  彼女は再び作業をはじめた。 「あ……」  マルチはまだなにか言いたそうだったが、すぐには言葉が見つからないようだった。 「マルチ… 帰るぜ。」  これ以上はやめておいた方がいいだろう。オレは小刻みにふるえているマルチの肩を抱いて地下通路へ向かった。  後ろを気にするマルチにあわせて、一度振り向いてみたが、線路上にいるであろうHM-12の姿を見ることはできなかった。  その夜、マルチはベッドの中で声を殺して泣き続けていた。 「ううっ、あの子、かわいそう…。たった一人で…真っ暗な中でお仕事しているなんて…  わたしと同じメイドロボなのに… 寒いのに… 恐いのに… ううっ…」  同じメイドロボと言っても、量産型のHM-12はマルチとは違って単に命令されたことを行う機械にすぎない。 洗濯機が不平を言わずに汚れ物を洗濯するように、掃除機が文句を言わずにゴミを吸い集めるように、 HM-12も別段なんの不満も感じずに深夜の清掃作業を行っているのだろう。マルチのようなこころを 持っているわけではないはずだ。  だが、同じ姿をした自分の「妹」が酷使されている様子を見たマルチの辛い気持ちは十分に理解できた。 オレはそっとマルチの方に手を伸ばす。   なでなで なでなで… 「あっ… 浩之さん… す、すみません。起こしてしまいましたか?」  なでなで なでなで… 「……ありがとうございます」  なでなで なでなで…  「ううぅ… う… うっ…」  なでなで…… 「ひっく… ううっ…」     オレはマルチが泣きやむまで、ずっと頭をなでてやった。    次の日の朝、何やら思い詰めたような表情をしていたマルチが、意を決した様子でオレに声をかけてきた。 「あの…浩之さん。」  マルチのいいたいことはすでにお見通しだ。 「ああ、駅のHM-12のことだろ。」 「…はい。…浩之さんにはすぐわかっちゃうんですね。ちょっと様子を見に行きたいのですが…」 「ま、マルチはHM-12みんなの姉さんだからなー。そりゃー気になるだろうさ。」      来栖川エレクトロニクスによって発表された2種の新型メイドロボはまさに一世を風靡した。 販売開始から2年、オフィス・家庭での使用を想定した高級機HM-13、そして清掃・介護など労働力の不足しがちな 仕事における使用を想定した普及機HM-12は今やさまざまな場所で見られるようになっていた。  しかし、多くの人間にふれる機会があり、さまざまな職種に適応してゆかねばならないHM-13に比べ、 HM-12は単純労働に利用されることが多いため人間型である必然性に乏しかった。 このため、清掃なら清掃に機能を限定し、形状も人間型でないものがHM-12よりもさらに安価で供給されるようになると、 HM-12は徐々にその働き場を失いはじめていたのである。  そしてそのことに一番心を痛めていたのがマルチであった。  あのHM-12もおそらく遠からず廃棄されるのではないか。きっとそう考えて心配しているのだろう。 同じ姿をした姉妹たちが苦しんでいる中、自分だけが幸せに暮らしていることを申し訳なく思っているのだろう。 …こころやさしいマルチは。  もちろん、マルチ一人に苦しい想いをさせるつもりはさらさらない。 「オレも一緒に行くよ。…確か長瀬主任にもらった作業服があったんじゃねーかな。来栖川のロゴが入ったやつ。 学祭の時にわけてもらっただろ?アレ、まだ置いてあったっけ?」  オレはふと思いついて訊ねた。 「はい。洗濯しておいてありますが、どうするんですか?」  マルチはオレの質問の意図が分からず当惑したような表情を返してくる。 「つまりだ、いきなりオレたちが行ってあの子に会わせろって言っても、きっと変に思われるだけだろ。 それよりあの作業服着て、来栖川から点検に来たとでも言やあごまかしやすいんじゃねーか?」 「なるほどー。そうですね。じゃ、わたしも標準服を着てきます。」  標準服とはHM-12型に最初から同梱されているメイド服のことだ。オレはいかにも召使い然としたその服を マルチに着せたことはなかったが、単純労働に従事するHM-12のほとんどはそのメイド服姿で働いていた。 あのHM-12が着ていたものも同じものだろう。 「おう。それがいいな。よし、じゃ、オレは点検員でマルチはその助手ってことで行くぜ。」 「はい。わかりました。」  作業服姿のオレと道具箱をかかえたマルチは、いかにも企業から派遣されてきた職員という風を装って駅に向かった。 マルチは真剣な表情だ。あのHM-12が心配でたまらないのだろう。  コンコン…   駅員のいる駅務室の扉をノックする。 「はいー?」  顔を出した若い駅員にオレはぺこりと頭を下げた。 「あ、毎度お世話になっております。来栖川サービスセンターの長瀬と申します。あのー、こちらで利用していただいて おりますHM-12型の現在の状況等確認させていただきたいのですが…」 「あ、そうなの? んじゃ入って。えっとね、上り線ホームのトイレの横のところに物置があるんだけど、 そこに入れてあるから。いま充電してると思うよ。」 「ありがとうございます。えー、点検を行いますので、ちょっと外に持ち出してもよろしいでしょうか?」 「時間かかるの? 夕方までには返してよ。午後のラッシュ前に掃除させなきゃなんないんだから。」 「はい。大丈夫です。おい、いくぞ。」 「はい。かしこまりました。」  わざと表情を殺したマルチがオレのあとに従う。と、駅員が声をかけた。 「ねーねー、そいつもおんなじHM-12だろ?」 「そうですが?」 「ずいぶんきれいにしてるねー。うちのポンコツとはエライ違いだよなー。まー掃除くらいしかできないのに 人間型って言うのがおかしんだよな。あの暗いポンコツ見てると気が滅入るしね。 点検して修理費がかさむようなら見積書作ってくれる?そしたら新型に買い換えれるかもしれないしさ。」  この野郎… だが、オレとマルチは無言で頭を下げると改札を通って教えられた物置に向かった。  きれいに清掃されているがやはりトイレの匂いが漂う一角、簡単な作りの物置があった。  ガラ…  さびたドアを開くと、そこにはモップやほうき、バケツ、クレンザーなどがきちんと整理されて置かれていた。 かび臭いにおいに洗剤や薬剤の匂いが混じり、快適な空気とはとても言い難い。 そして、コンクリートがむき出しになった床の上、昨日オレたちが見たHM-12が膝をかかえてうずくまっていた。  彼女の手首と足、耳のセンサーにはコードが接続され、彼女が充電中であることがうかがえた。だが、マルチであれば 充電状況をチェックするためのメンテ用パソコンを利用するのに、彼女は変圧器のようなものから直接充電を行っていた。  その変圧器を一目見たマルチが驚いたような声をあげる。 「ひ、浩之さん! この変圧器、規格が違います。これでは内蔵のバッテリーにかかる負担が大きすぎます!」  オレには細かい規格の違いはわからなかったが、この状況があまりにもひどいものであることは十分理解できた。  と、マルチの声が聞こえたのか、彼女がゆっくりと顔を上げる。 「……それでよろしいのです。そうすることで高速に充電することが可能になりますので。何かご用でしょうか?  この部屋をお使いになるのでしたら、もう充電はほぼ終了いたしましたので、どうぞお使い下さい。」  立ち上がったHM-12はそう言って物置から出ていこうとした。 「待ってください。」  マルチの声を聞いた彼女はゆっくりと振り返った。…あちこちが破れ、しみだらけのメイド服。…靴にも大きな穴があいており、 素足がのぞいている。…手や顔はすすけたような汚れがついており、きれいな緑色であるはずの髪も汚れにまみれている。 「はい。なんでございますか? 運行関係のことでしたら恐れ入りますが駅務室の方にお問い合わせ下さいませ。ご案内いたしましょうか?」 「…そうじゃないです。あのね… あの… ううっ…」  あまりにもひどい「妹」の姿を見たマルチはまともに言葉を発することができずにいる。オレはマルチの肩に手を回しHM-12に声をかけた。 「オレは藤田浩之、こっちはマルチだ。すまねーが、ちょっとオレたちといっしょに来てくれ。夕方までには帰れるようにするから。」  オレの言葉に対しても彼女は全く表情を変えない。…というより、彼女には表情を作る機能そのものがないのかもしれない。 「わたくしは当駅の備品でございますので、当駅を離れることはできません。」 「あ、点検なんだよ、点検。ちゃんと駅員には許可を取ってあるから。」 「…そうですか。わかりました。」  彼女はそれ以上の質問はせず、オレたちといっしょに改札に向かった。オレたちは駅員に一言ことわって改札を抜ける。 その後は人目を避けて急いで家に戻った。   「さ、あがって下さい。」  マルチはHM-12の手を引いて家の中に引き込んだ。 「こっちです。まずその体をきれいにしなきゃね。」  ザァーーーッ  バスルームからシャワーの音が聞こえてくる。  カラッ… 扉が開いてマルチが顔をのぞかせた。 「浩之さーん、すみませんが、わたしのメンテ用パソコン、立ち上げておいていただけませんかー。この子用の服もお願いしますー。」 「OK、まかしときなって。」  15分後、マルチはニコニコしながら「妹」の手を引いてオレのところにやってきた。 「ひろゆきさーん、ほら、見て下さい。きれいになったらとっても可愛いでしょー。」  確かに体の隅々までていねいに洗われたHM-12は、マルチとそっくりの可愛い顔立ちであり、マルチのジーンズとクリーム色の トレーナーがよく似合っていた。 「………」  当のHM-12はとりあえずはおとなしくマルチの言うことに従っている。これも点検の一つだと思っているのかもしれない。 …おそらくこのHM-12は納入以来一度も点検をうけたことがないのだろう。 「あなたのお洋服も洗っておくけど、乾くまでこの服着てて下さいね。」 「…マルチさま、あなたもメイドロボットなのですか?」 「そうですー。わたしはHMX-12、あなたたちHM-12型の試作機なんですよ。」 「HMX-12… データにあります。わたしたちとは全く違う機能をお持ちなんですね。…実験室の事故で破棄されたとなっていますが…」 「えへっ… それウソなんですよー。黙ってて下さいね。あ、そうだ。それよりね、わたしあなたのお名前考えたんです。 あのね、あなたのこと、ミナって呼んでいいですか?」 「………」  HM-12はすぐには答えない。オレはとりあえずその名前の根拠を訊いてみることにした。 「なあマルチ、なんでミナなんだよ。」 「はい。この子の製造番号が10037ですよね、その最後二つの数字からとったんですー。どうでしょうか。」 「なるほど37だからミナか。いいんじゃねーの。」  HM-12がようやく口を開く。 「名称はわたくしを所有する駅の方々の決定することでございますので、藤田さまとマルチさまがお決めになることはできません。」 「ううん、ホントの名称じゃないです。わたしと浩之さんがあなたを呼ぶときのお名前です。」 「それくらいならいいだろ?」 「…はい。特に禁止規定はございません。」 「じゃ、それでいこーぜ。な、オレたちの間じゃお前は『ミナ』だからな。…さて、マルチ、メンテの方頼んだぜ。」 「はい! ミナちゃん、こっちに座って。わたしにできることはあんまりないですけど、バッテリーはわたしの予備のものと 交換してあげますね。ずっと楽に動けるようになりますよ。」  マルチは時折マニュアルを参照しながら、ミナのチェックを行っていった。 「うーん、ずいぶん傷んでます。きちんとオーバーホールしてもらえるといいんですが…」  やっぱりマルチ一人じゃ無理なのかもしれない。ま、いざとなりゃあ長瀬主任に泣きつく手もあるしな。  だが、それだけでもHM-12にとっては大きな変化があったようだ。 「とても動きやすくなりました。点検、ありがとうございました。業務が迅速に遂行できますから駅のみなさまにも 喜んでいただけると思います。では、そろそろ駅の方に戻ります。衣服の方、お返し願えますでしょうか。」 「あ、これ着ていって下さい。わたしもういらないですから。」  マルチはさっきまで自分が着ていたメイド服をミナにさしだした。」 「そう言うわけには…」 「いいんです。点検の助手がくれたって言っておいて下さい。それから、いままで着ていたやつもお渡しします。 ちょっとまってて下さいね。」  マルチは乾燥機からミナのメイド服を取り出すと丁寧にたたんで袋に入れてやった。 「ミナちゃんの靴はもうダメですから、わたしのを履いて帰って下さいね。同じ靴だから問題ないと思います。」 「マルチさまの靴はどうなさるのですか。」 「浩之さんに買ってもらったのがあるんです。大丈夫です。」 「じゃ、お仕事がんばって下さいねー。時々会いに行きますから。」  オレとマルチはミナを駅まで送って行った。ミナは改札の手前でこちらに向かって深々と頭を下げると構内に姿を消した。 しばらくすると、ホームの上にミナの姿が現れ、黙々と掃除をはじめた。吸い殻を集め、空き缶を拾い、 時折しゃがみ込んではガムの噛みカスをヘラのようなものでこすり取る。埃っぽく冷たい風がミナの緑の髪を揺らしてゆく…。 「マルチ… もう帰ろうか」 「……はい。」  マルチは線路脇の金網のフェンスにしがみつくようにしてミナを見つめていた。オレはマルチの冷たくなった肩を抱き寄せて、 家への道を歩き始めた。  …ホームの掃除が終わったあとも、深夜、誰もいない駅でミナは線路上のゴミを拾い、酔客の吐いた汚物を片付け、 コンコースをきれいに掃除し、券売機のガラスを磨き、トイレの落書きを一つ一つ消してゆくのだ。 たった一人で。いやな顔ひとつせずに。    オレたちはそれからも時々時間を見つけてはミナに会いに行った。量産型である彼女は やはりマルチの ような「感情」をもっていないのだろう。我々を見ても特段の変化を見せることはなかった。  それでも、会いに行くたびごとにマルチはミナの身だしなみを整えてやったり、バッテリーのチェックを してやったりしていた。「妹」の世話をするマルチの様子はほんとうに「お姉さん」な感じであり、 見ているオレはついつい頬がゆるんでしまうほどだった。


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