煮干いりこの全て

製造方法・流通等   種類・添加物等   品質表示・賞味期限等

  • 煮干魚類の製造法から流通まで
  • 産地・問屋でしか分からない情報も盛り込みます。
  • 生産・流通の裏話もあります。
  • 疑問点は、「ご意見帳」にお書きください。

  煮干いりことは? 正式名称:煮干魚類
    
 昭和27年に煮干いりこのJAS規格が制定され、生産者の規格として利用されてきましたが、永年の間の実態にそぐわなくなり、流通の実態が大幅に変わったことなどから、平成12年に、新JAS規格が制定されました。ここで「煮干魚類」という呼び名が使われることとなったのです。
 ともに煮干魚類の表示の適正化を図る為、品質表示基準が制定されました。「消費者の選択に資すること」という表現がなされていますが、個人的には量販店を意識した基準となってしまっていると考えます。

JAS定義概要
 ・煮干魚類とは、マイワシ、片口イワシ、ウルメイワシ、イカナゴ、鯵、等を煮沸し、たんぱく質を凝固させ乾燥させたもので含有水分18%以下の物。

 ・煮干粉末とは、上記を粉末にしたものに削り節、海藻類、きのこ類の粉末を加えたもの。ただし煮干魚類の粉末の割合が50%以上で、調味料(アミノ酸等)、糖類、食塩類を加えていないもの。

 ・ちりめんとは、頭部から尻尾の付け根までが約3cm以下、イカナゴは約5cm以下で、含有水分55%以下の物。

 ・パック品とは、機密性のある容器に入れ、かつ、不活性ガスまたは脱酸素材を封入したもの。

 裏話
   立案当初は、ちりめんの水分は、35%以下となっていましたが、最終的には55%以下になっていました。詳しくは後述もしますが、乾燥度の高いものが筆者としては断然お薦めです。               

 


  煮干いりこが出来るまで

 一般的に煮干魚類は、漁獲⇒原魚水洗い⇒煮沸⇒乾燥⇒選別⇒箱詰め という工程を経て製品となります。産地や原魚にもよりますが、この工程の中で微妙に違った製品が出来ることとなります。

漁獲方法 
  ほとんどが専用船で漁獲されますが、魚市場などに水揚げされたものを加工する場合もあります。昼間に漁をする地域と、集魚灯などを利用して夜間に漁をする地域があります。
  煮干いりこになる魚種は、ほとんどが明るい時に捕食活動をしますので、脂質の少ないものが上質とされる煮干は、当然、夜明け前後に漁獲され製品化された物に集中することとなります。
  
 裏話
  腹切れをした煮干魚類(一般に鮮度が悪く良質でないとされています)は、漁獲後の運搬の過程に問題があった時に発生します。魚場が遠すぎて運搬に時間を要した。予想以上の大漁で十分な氷が用意できてなかったなどです。しかし経験上「だし」がでないとか、「悪いダシ」などということは一切ありません。
水洗い 
  原魚の「ぬめり」を取るために行います。当然、丹念にされたものがいいようです。 

煮沸工程
 @:煮干魚類(いりこ)
   海水を利用したものと、真水に真塩を加えた塩水を利用するものが大部分です。煮干魚類に関しては、海水を利用する地域が圧倒的です。生産者の経験からは、海水炊きは海水のミネラルも多く含まれるし、「だし」も良く出るという意見が大多数ですが、私は確かな根拠は持ち合わせていません。
   ただし、真水に真塩を加えた塩水を用いて煮沸した場合には、煮干自体が青黒く仕上がる傾向があるようです。
 A:ちりめんじゃこ
   煮干魚類と同様に製造されます。ここで問題なのですが、海水で炊いたものは、海水の持つ「にがり?」のためか後口が悪く真水に真塩を加えたものと比較すると、比べ物になりません。生産者も同じことを言いますので間違いないところです。
   プロが、高く評価するちりめんじゃこは、「くるん?」という感じで曲がっています。まっすぐになっているということですが、現在主流になっている「ちりめん用自動釜製造ライン」とか昔の「丸釜」で作られたものはそのような状態で仕上がっています。少なくとも、「せいろ」と呼ばれる煮干魚類用の角釜のラインで製造されたものとは全く違います。釜の中の水流が関係していると思われます。

 裏話
   真水に真塩を加えた塩水で煮沸された煮干は、青黒く仕上がる傾向があると書きましたが、「量販店のパック詰煮干には、こちらの方が良く売れますが、乾物屋さんでは、海水炊きの産地のものしか売れません。」という話を地方の(大都会です)問屋さんに聞きました。憶測ですが、乾物屋さんで購入する人は、食材のプロ、量販店で購入した人はアマという構図が成り立ちます。
   一方、ちりめんじゃこは、真水に真塩の製品がおいしいわけですから、不思議です。

乾燥工程
 @:煮干魚類(いりこ)
   乾燥機を使用するものと天日乾燥があります。現在では、ほとんどが乾燥機によるものです。製品を購入される時も、乾燥機仕上げのものをお薦めします。天日乾燥品は、酸化するのが早く問屋での流通する価格は非常に安いのですが、問屋もほとんど扱わないので流通量もほとんどありません。衛生面でも然りです。
   大型の魚種で、「風乾」といって冬季の強い北風を利用して乾燥させる時なども、紫外線を当てないような工夫もされているところからも、乾燥機仕上げが有位でしょう。
   天日品も、冬季に作られる無油物は、最近見かけることが少なくなりましたが、非常にいい仕上がりをしていました。
 A:ちりめんじゃこ
   天日と乾燥機仕上げがあるのは、煮干魚類と同じです。最良の乾燥法はチリメン専用乾燥機のものが良いとされています。煮干魚類用の乾燥ラインを使用したものは、わずかな乾燥機独特のにおいが残ってしまいます。しかし味に変わりはないようです。 
   いわし類は、天日乾燥にすると青く仕上がるようです(温風を使用しないためと考えています)ので、見た目を重視する時などに、天日にするところもあります。問屋間では、ちりめんじゃこの天日乾燥品は、嫌われることはないようです。実際にちりめん用自動釜ラインの天日乾燥品を扱いますが、酸化はほとんど見られません。

 裏話
   「天日乾燥が何でもおいしい?」この意見が「全国煮干協会」で議題になった時に、ある水産試験場の技師の方から詳細な説明を受けました。
   「あなた方、煮干のプロがイメージだけでものを言ってはだめです。科学的に根拠を示して言ってください。煮干のうまみ成分のイノシン酸は、紫外線によって飛ばされます。そのうまみが飛んだものがおいしいわけがありません。」と
    今でも、天日いりこなどとイメージだけをを売りにしているところがありますが、買わない方が懸命です。ただし、昆布や椎茸などのうまみ成分は違いますので注意してください。

    


  選別作業
    
  大まかに言うとここまでで、煮干は出来上がっています。これからは、販売される為の作業となります。

■選別作業  
  主に行われるのは目視による異物の除去ですが、河川からも海岸からも色んなものが捨てられて魚網にはいることが多々あります。鮮度を保持した方が、高単価の製品になることが多い為に、一緒に煮沸されるケースが多いと思います。また、製造の過程で混入してしまうこともあります。多いものとしては浮遊物としては漂流している木片、タバコのフィルターなどがあげられますし貝殻や金属片も見られます。筆者としては、天産品に混入してしまう天然の異物はある程度我慢していただけるのが最良の方法だと考えています。
  最終的に異物が混入した場合の責任の所在地は、小売店への納入業者ということになっています。購入した人は「生産者は?流通問屋は?」と思われるでしょうが、あくまで最終の納入業者という取り決めがあります。私としては、故意の混入はないと考えますが、責任の所在のことは???です。


※ 裏話
   他の産物の勉強はしておりませんが、煮干魚類の製造は特別な許可がなくても誰でも作ることが出来ます。だからこそ生産者の意識改革が一番必要だと考えますし、その販売に関わる各県の魚連組織の徹底した指導も必要です。
  筆者は異物の混入に関してある魚連を通じ苦情を呈しましたが、生産者に伝わることなく販売業者?である魚連の始末書だけをもらった経験があります。その生産者は旧知の間柄でしたけど、「聞いてない、魚連が対処してくれたのだろう」と私に返答をくれました。各県の魚連に適切な指導と対処を求めたいと思います。
 

  箱詰め作業
    
  これからが、いよいよ流通状態になりますが、筆者は何も言うことはありません。ただ単に箱に製品を入れる過程です。煮干魚類では、1c/s 7kg〜10kg、ちりめんじゃこは、4kg〜6kgが多いようです。

※ 裏話
   一般的には箱詰めされて流通に乗りますが、煮干いりこに袋詰できない「クズ」はつき物です。魚連などの指導によって「パックする業者」のことも考えて、正味は「クズ」になる可能性の部分を考えて多めにしていただきたいと思います。


  流通
    
  製品となった煮干は、おおまかに、魚連で入札されるもの、生産者や産地問屋によって直接関東や関西の市場でせりにかけられるもの、産地で直接問屋が買い付けするものに分けられます。

問屋流通
   いずれも需給バランスで、価格が決まるのですが、単純に言えばこの時点での価格が一番安いことになります。買い付けされた品物はこの後、酸化を防ぐ為に、冷凍庫などで保管されたり金利などもかさむからです。ただし相場品ですので漁に一定のサイクル以上の変化があった時などとてつもない乱高下があるときもあります。

※ 裏話
   最近の生産直後の価格を握っているのは、量販店などへの納入業者の仕入れ数量であると考えています。私としては、鮮魚などと似たような相場の変動がある商品なので、量販店などが提出を要求される「見積もり」(半年サイクルが多い)は煮干魚類に関しては、購入者にも納入業者にも悪い結果をもたらしていることと考えています。


  袋(パック)詰
    
  上述までを経た煮干魚類などは、パック業者の手に渡り小袋に袋詰されます。一般の方が小売店で購入されている品物は、この状態の商品です。

パック品
  JASで定めるところによりますと、不活性ガスや脱酸素材を封入したものとなっていますが、それは、煮干魚類が高温多湿では酸化が進みやすいのを考慮したものです。賞味期間も定められていますが、その話は「品質基準」の項でします。

※ 裏話
    次項以降では、気になる産地、賞味期限、など購入する時にもっと役立つものを説明していきます。