煮干いりこの全て
  

 製造方法・流通等   種類・添加物等    表示・賞味期限・保管方法  

  • 煮干魚類の種類と添加物。
  • 産地・問屋でしか分からない情報も盛り込みます。
  • 生産・流通の裏話もあります。
  • 疑問点は、「ご意見帳」にお書きください。

  煮干魚類の種類
    
 乾物屋さん等、専門店に行くと、色んな種類の煮干魚類がありますが、一般に小売店でパックにされて販売されているものは、近年では、「片口いわし」だけでしょう。

 片口いわし

 この魚種は、全国的にどこかで製造されている場合が多いので、産地にこだわらなければ、納入業者は量販店等に「見積もり」が出しやすくなります。というよりも他の魚種は、それが出しづらいと考えた方が正解だと思います。
 大別して、東日本で主に使われる背黒と呼ばれる片口いわし、西日本が主な消費地の湾内系の背中が白い片口いわしに分けられます。もともとは同じ魚種だと考えますが、湾内に長くとどまったいわしがの方が魚体全体に白く、外海に出ると背中が黒いイワシになるようです。小型の「かえり」などに背中の黒い片口イワシはいませんので、この考え方はあたっていると思います。
 背黒イワシ(片口)では顕著ではありませんが、湾内系のものは、煮沸の仕方や乾燥方法で魚体全体が、青白色のものやクリーム色のものなどが出来上がります。
 「だし」の特徴は当然、使用地域でわかるように、背黒系が「硬め」湾内系が「やさしめ」という表現で分かっていただけるかと思います。
 最高入札価格は、私の記憶では 湾内系でKgあたり@3500、背黒系で、@1500前後だったと思います。逆に最低は@300くらいでしょう。

■ ウルメイワシ

 
この魚種も背中の黒いイワシです。主な消費地は北陸地方です。長く煮立てても、「にがみ?」がでにくいために、「いろり」の風習があった地域で重宝されたのではないかと考えるのは間違いでしょうか?
 魚体が、硬い為に、「いわし削り」としても良く使われています。
 なぜなのか、この魚が、幼魚の時に「ちりめん」や「かえり」の中に混入していると見事に黄色から茶色にまで変色してしまいます。 
 数年前まで、@1500という一時的な高値の入札がありましたが、近年では@800くらいまで落ちてきました。

 マイワシ

  今や幻の魚といわれるくらい貴重な魚となっています。10年くらいまでは、魚群が固まっている為に、網にかかったマイワシが、船上まであげられないような状態でした。当然のように価格も安かったのですが、現在では、鮮魚でも分かるように安くはありません。 ただ、現在では量販店等の「見積もり」などで使えない漁獲量なので暴騰することはないでしょう。ただし業務用などに根強い人気がありますので、「そこそこ」の単価で推移するでしょう。高い時は、@2000などということもありましたが、現在は@1000以下でしょう。

■ アジ

 主に、12月から年明けの2月くらいまでの、日本海側での漁がメインとなります。集散地は、宮崎・高知・北海道など全国に広く散らばっていきます。このことからも幅広い地域で消費されていることがうかがえます。
 一方、「夏アジ」と呼ばれる魚体のやわらかい湾内で漁獲されるものがあります。ダシの出方が早く業務用として主に取引されます。パックにすると、魚体が崩れて使えないと考える方が自然かもしれません。
 価格的には「冬アジ」が、@800、「夏アジ」がその半値くらいのところでしょう。このことからも、量販店などの納入業者の競争の少ないものは、安価で推移するようです。

 サバ

 煮干魚類用には、単価も安いものですから、この魚種だけを目的とした漁は行われていないでしょう。雑魚として、混入したものが選別された結果の製品だと思われます。さば削りに代表されるように「だし」は、十分出るでしょうが、片口いわしなどの漁に混入した場合には、魚体が大き目の為に煮沸の時点で、未煮沸のものが混ざることが多々あります。
 入札単価は、おおむね@400の高値という感じです。

 キビナ

 煮干魚類(ダシ)用としては、沖縄で使われるのがほとんどです。また小型のものは「佃煮」用としての需要が高い魚でもあります。
 小型のものは、最近では入札高値@1500程度。「出し」向けの8〜10cmのもので高値@600もあれば、生産者もうれしいでしょう。

■ サッパ
 「このしろ」兄弟と言ったほうが分かりやすいと思います。イワシなどと同じニシン目の魚です。めったに見かけなくなりましたが、片口いわしの湾内漁に混入して選別されるようです。「だし」はあっさりしていて、こだわって使う人が多いようです。流通はほとんどありませんが、参考までに入札高値@500といったところです。

 


  煮干魚類ではない?煮干いりこ

 JASでは、ニシン目及びスズキ目の魚種だけが、煮干魚類とされているみたいなのでその他はこちらに書き出してみました。

 あご(トビウオ)
 
   主産地は、大部分が長崎県北部の平戸近辺です。漁期も10月ごろの3週間程度と不安定な漁です。隠岐にも夏場漁での製品があるのですが、流通が余りありませんので詳しくは分かりません。
 最近の「らーめんブーム」によって注目の魚種ですが、漁期が限られていることなどで、2002年度産は、史上最高値を示したみたいです。もともとは、大漁時に「焼きアゴ」の副産物として作られ始め市場性が出てきたものです。平年は、@800でしょうが漁の少ない時は、倍値も珍しくありません。
 「だし」は、あっさり系です。究極の「だし」といわれる「焼きあご」に関しては、後述します。

 エソ

  かまぼこの主原料になる魚と言えば分かっていただけると思います。非常に貪欲な魚でイワシなどを捕食する時に魚網に混入し選別されます。白身魚で、あっさり系の「ダシ」が出るためか、漁師さんに人気があります。入札高値@800でしょうか。

 カマス

 干物で有名ですので説明するまでもなく高級魚です。単独で煮干魚類用の漁で捕獲できない決まりがあるようです。混入したものが選別され製品となりますが、味も価格も「エソ」と同じように考えて差し支えないと思います。

 えび

 「がらえび」と言う呼び名で、広島県近辺が集散地になっています。名前を聞いただけでも高値と理解しそうですが、入札高値@3000でしょうか?
 これにも「焼きえび」という熊本県で生産される鹿児島向けの「だし」用があります。
残念ながら、こちらは入札にはかかっていません。

■ イカ
 「だし」用途でなく、珍味として使われることが主です。剣先イカと真イカでは、価格は天と地の差です。いわしの漁に混入するのですが、入札単価は、@2000も@100もあると言うところでしょう。


 大体こんなところが、煮干いりこの全体像です。思い出しながら、補足していきます。

    


  焼き干し
    
  全国各地には、煮干いりことは違う「焼き干し」と言うものがあります。煮干魚類とは違う方法で製造されます。煮沸工程がないかわりにそこに「焼く」と言う作業がはいりますが、煮干魚類より数倍の手間隙がかかっています。当然、高級の「だし」となりますので昔はお正月の時の限定で各地独特のものが作られたのだと考えます。
 「焼きあご」「焼きえび」「焼きイワシ」「焼きはぜ」「焼き鯖」「焼鮒」など様々ですが、流通量の多い前二者を紹介します。

 焼きあご 

  平戸近辺だけで製造されたものが、自信を持ってお薦めできます。生の原魚の見分けに熟練を要するからです。「油あご」と呼んでいる脂質の多いものを抜き出すのが、良い焼きあごを作る第一段階です。
 一時期は、ガス焼きが導入されまして外観は変わらなくとも「だし」が出にくいことがわかり、現在では炭火焼きに戻したところが大半です。肉汁を取り込むような焼き方ではだめだということが分かりました。焼き鳥を焼くような両面焼きが主流ですが、当店オリジナルは全面焼きで短時間で焼き上げています。
 生月島というところで入札が行われていましたが、現在はありません。強いていえば薄漁
の2002年度産でも、不景気の為か、@2200でしょう。
 原魚及び製品の輸入品も出始めました。購入する人は注意が必要です。

■ 焼きえび

  主な消費地は鹿児島県、生産地は熊本県です。生産者も限定されていまして、価格も製造販売元の限定です。ガス焼きが主流で、時期によっては、輸入えびを使用します。
 

  煮干魚類の添加物
    
■ 酸化防止剤(ビタミンE)   

  天産品なので全て無添加と思いがちですが、添加物を使用したものがあります。
 全国煮干協会では、酸化防止剤としての「抽出ビタミンE」の使用を認めております。元来イワシなどはビタミンEを魚体の中に持っていますが「抽出ビタミンE」は、魚類からの抽出でない為に、表示する義務が生じていると考えます。
 流通量は、無添加品と半々くらいでしょうか?

■ 酸化防止剤(BHA他)
   
   全国煮干協会では、この種の添加物使用品の流通をさせないよう話し合いがなされていますが、会員の中にも使用したものを好む業者もあります。煮干類の酸化を遅らせるのにとても有効だからです。食品衛生法で禁止されていない物質ですので、規制するわけにはいきませんが、消費者のイメージを確保する為にも協会が打ち出していると考えます。
 それぞれの業界の力加減で、BHAに関しては添加物表示をしなくてもいい業界もあるようですが、このことは、少なからず外国の圧力もあるかもしれません。
  一般に「だし」をとると、出し汁が白濁する傾向があります。また、この物質は空中感染?することもあるから、製品を扱う業者は無添加品に付着するかもしれないので「保管には気をつけて!」ということも聞いた記憶があります。

■ 着色料

  必要ないと思うのですが、使われているものがあります。煮沸した魚の目は白いはずなのに青くなっていたりするので分かりやすいです。