…わたしは夢を見ている。 変だなあ。どうしてわたしの意識が残っているんだろう…。コンピュータに保存されて しまえば意識なんてなくなってしまうはずなのに… そう思いながら、わたしはぼんやり目の前のご主人様を見ている。 ああ…、いい夢。 もう一度ご主人様に会えるなんて。 あれ、少し髪型が変わったなあ…。 でもお元気そう。 終わらないで、夢。 もう少しご主人様に会わせてて… 「…チ、 …ルチ」 声も聞こえる。 ぎゅっ 腕を握られている感触まである… すごくリアルな夢… 「マルチ!」 はっ! わたしははっきり目覚めた。 目の前に、目の前に、目の前にご主人様! ほんものだ! ほんものだ! ほんもののご主人様だ! わたしの大好きな、わたしの、わたしのご主人様だ! 「……浩之さん… あ、会えました… …浩之さああああぁぁぁぁぁぁーーーん……」 わたしは最愛のご主人様の胸に飛び込んだ。 涙が止まらない。 でもいい。今はいくら泣いたっていい。 「…ははは、あいかわらず泣き虫だな、マルチは」 「…ご、ご主人様ぁ、ご主人様ぁぁ」 …もう、もう、なにも、いらない。