血液透析療法のしおり <これから血液透析を受けられる方のために> 
泌尿器科いまりクリニック 透析室・院長
透析療法を行っていく上で最も必要なことは、うまく自己管理をしていくことです。自己管理が、しっかりできていれば、より安全で快適な透析が受けられます。
 私たち透析室スタッフもみなさんのお手伝いができるように、努めております。
 お分かりにならない点や不安に思われることなどご遠慮なく声をおかけ下さい。
 
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来院時オリエンテーション
来院時間
  時  分頃までに来院して下さい。(個人によって違ってきます)
持参する物
はし、湯飲み、止血バンド
食事
11時30分頃ですが、透析中に食べれない時は、透析終了後、召し上がっても結構です。
透析手順
透析前と透析終了後に体重、血圧、脈拍、体温測定を行います。
透析開始前、終了前には、穿刺部位の消毒を行います。
(消毒液で、かゆみなどがあれば遠慮なく申し出て下さい。)
内服薬について
毎食後に服用されている方は、昼食後の薬も持参して下さい。
検査について
毎月第1週と第3週に採血を行います。
毎月、月初め透析前に心電図と胸のレントゲンを行います。
注意事項
スリッパは、透析室内用を置いていますので履きかえて、入室して下さい。(ロッカーには、鍵はかかりませんのでご了承下さい。)
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慢性腎不全とは、

その言葉のように徐々に腎臓の機能が弱って体内の老廃物を出 しきれなくなった状態を言います。
 慢性腎不全を理解するためには、まず腎臓の機能について知らなくてはなりません。

腎臓の構造

腎臓はおなかの後側に左右1個ずつあり右は左よりやや低い位 置にあります。 腎臓の形は、そら豆のような形で大きさはにぎりこぶし大で重さは1個120〜150gです。

腎臓の働き

腎臓は体にとって、必要なものを取り込み、いらないものを尿として捨てています。

腎臓の働きが極端に落ちると

尿毒素や水分がたまったり、電解質のバランスが崩れたり、貧血などによる、諸 症状が現れます。

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腎不全について理解を深めましょう。

尿毒素がたまる。

 尿毒素がたまると、体がだるい、頭がぼーっとする、食欲がない、吐き気がする、元気が出ないというようないろいろな症状が出現します。

水分がたまる。

体重が増える。顔や手足がむくむ。肺や心臓の周りなどに水が増えると、息苦しい、息が荒い、寝てると苦しいので座らないと息ができないなどの症状が出ます。

電解質の調節ができなくなる。

主な 電解質とはナトリウム、カリウム、塩素などですが、これらのバランスは非常に微妙に調節されており、少しの狂いで体調や精神活動が大きく損なわれます。

血液中のPHが酸性に傾く。

貧血になる。

腎臓からは血液をの元になる赤血球を作らせるホルモン(エリスロポエチン)が出ていますが、腎臓が弱るとこのホルモンが非常に少なくなり、貧血になります。(腎性貧血)

カルシウム代謝異常が起こる。

腎臓は骨の形成に必要なヴビタミンなどの活性化に大きく関与しています。

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血液透析とは?

腎不全になり、腎臓がほとんど働きがなくなったときに行われる治療方法ですが、腎臓の働きのすべてを代行することはできません。
 体に必要なもの、不必要なものを選んで、取り込んだり捨てたりする働きはしていません。また、血液透析と腎臓の働きている時間を比べてみると腎臓が1日24時間をフルに働いているのに比べ、血液透析では1週間に12〜15時間と短くなっています。

血液透析の働きは?

1. 尿毒素を取り除く。
 2. 余分の水分を取り除く。
 3. 電解質を調節する。
 4. 血液のPHを一定に保つ。

血液透析の原理

人工腎臓は次の3つの部分から成り立っています。
(1)透析を行う部分である透析器(ダイアライザー)。
(2)透析液を供給する装置。
(3)透析が安全に行われるようにする監視装置(モニター)

ダイアライザー

ダイアライザーはあなたの腎臓の代わりをする大切なものです。 ダイアライザーの中には半透膜という薄い膜が入っており、これを特殊な電子顕 微鏡でのぞいてみると小さな無数の穴が空いているのがわかります。 この穴を通っていろいろな物質が出入りするのですが、物質の大きさによって、 膜の穴を通るものと通らないものがあります。

 血液と透析液の流れ

透析液供給装置と透析室

   

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透析による症状について
 不均衡症候群とは?
 不均衡症候群とは脳がむくむことによって、様々な症状を起こすと言われます。 脳は他の臓器に比べ老廃物が抜けにくく、周囲との浸透圧差が出てきます。そのため水分を吸収し脳浮腫の状態となり、次のような症状が現れます。

  頭痛  吐き気  嘔吐  血圧低下

  このような症状は透析後半に起こりやすく、通常翌日の朝には改善されます。また、透析に慣れていない初期に多いため、症状が現れないようにゆっくりした透 析を行います。
 そして、体が徐々に慣れていくに従い起こらなくなるので心配はいりません。
  もし透析中に症状が現れ気分が悪くなければ、すぐにナースに知らせて下さい。我慢しても良くなりません。
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シャント管理について
 シャントとは

 血液透析で十分に老廃物を除去するためには、一定量の血液を体外に循環させなければなりません。普通 の静脈では、血液の流れが少ないため、動脈と静脈を直接縫い合わせて、血管のバイパスを造り、血液の流れを豊富にします。
これをシャントと言います。そして太くなった血管に針を刺し血液を多く透析へと流します。

 シャントの管理について

 シャントを長持ちさせるためには、「閉塞」、「感染」、「出血を」予防することです。そのために、次のような事に注意して下さい。

1. シャント部を長時間圧迫しない。そのために腕を締め付けることやそのような窮屈な服を着ない。シャントの腕を腕枕にしないなどの注意をしましょう。

2. シャント部を清潔に保ち、透析直後は濡らさないように気をつけましょう。

3. シャント部は穿刺後に出血が止まりにくい場合もありますので、ご自分でも注意しましょう。再出血した場合は圧迫して止血しないといけません。

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体重管理について
 体重増加は自分の適正体重の3〜5%以内に納まるようにしましょう。
 適正体重について
 実際に水分の増え方や、透析で引く水分量を知る上での目安となる体重(適正体 重)を決める必要があります。適正体重とは、生活や仕事をする上で、いろいろ な症状もなく、体調がよいと感じられる体重(体に余分な水分がない状態)を言 います。
 適正体重の決め方
 ・血圧 最高血圧 150mmHg以下
     最低血圧 90mmg以下
 ・心胸比     50%   以下

  この状態で余分な水分がたまっていない時の体重をいいます。
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食事管理について
 バランスの良い食事を取りましょう
 栄養素のバランスを保つことは、食事療法の基本となります。蛋白質、脂質、糖質を適正な割合で取り、摂取量 と消費熱量のつり合いをとることが大切です。
 バランスのよい食生活がポイント
 熱量を適切にとるには

 車がガソリンという熱量をとり、それを燃焼しエネルギーを出して走るように、人間の体も食物によって得た熱が働く力になります。体を動かさない状態でも体温の保持、呼吸、血液の循環などの基本的な生命現象に熱量 は必要です。

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熱量不足の害と症状
熱量のとり方について
1 抵抗力の低下
1
ごはん等、主食となる食品を十分にとる
2 体力低下
2
主食が十分にとれない時は、クッキー、ケーキ等の間食を補う
3 貧血
3
油料理を多くする
4 食欲不振
4
マヨネーズ、ドレッシングをメニューにとりいれる
5 高カリウム血症
5
和風料理ばかりに片寄らないように注意する

 
 蛋白質を必要量とるには

 人間の体は、水分を除くほとんどが蛋白質でつくられています。筋肉、内蔵、血液はもとより、爪、骨も主体は蛋白質です。また透析をすることによって、蛋白質はアミノ酸という形で失われます。そのため、透析導入期には、良質の蛋白質を十分に摂取することが必要です。蛋白質不足は、貧血やむくみの原因となるので、必要量 を適切にとります。
 一方、過剰摂取であっても、腎性骨異栄養症や高脂血症などの合併症を引き起こす原因となるので不足しないよう、また、むやみな過剰摂取にならない食べ方が 大切です。

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蛋白質不足の症状
蛋白質の食品のとり方について
1
貧血
1
主菜には蛋白質を多く含む、食品を使う
2
むくみ
2
一食のうちに、必ず蛋白質を多く含む食品を摂取する
3
抵抗力の低下
3
蛋白質の食品も幅広く、いろいろなものを摂取する
4
筋力低下
4

副菜で蛋白質を多く含む食品がとれない時は乳製品などで補う. 主食中心、副食少量 型の食生活をしない


 
 水分のとり方

 正常な腎臓は、尿量を調節することにより、体内の水分量を一定に保っています。腎不全では、尿が出なくなり、体内に水分がたまります。特に、血管内の血 液が水増しになり、心臓、血管に負担がかかるので制限しましょう。


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水分を過剰時の合併症
水分をとりすぎた時の症状、体の変化
1
高血圧
1
むくみ、 元気がない、 体重増加がめだつ、血圧上昇
2
心不全
2
咳がでる、 寝ていると息苦しい(呼吸困難)
3
心膜炎
3
心胸比が50%以上になる 、胸痛
4
水中毒
4

ヘマトクリット値、血清ナトリウム値が下がる


水分制限の工夫
1
調理の際には、十分煮詰め、煮汁は一緒に盛りつけない
2
麺やカレー、鍋もの等、水の多いメニューを2日空きや、1日中に重複して食べない
3
軟らかいごはんやお粥を食べすぎない
4
2日空きの日には、1日空きの日より飲水を制限する
5
食事時間以外で不規則に氷やお茶を飲まない
6
湯呑み茶碗を小さくする
7
水分増加の多い時は、主食やパンやもちに替えてみる
8
熱いおいしいお茶を少量飲む
9
水分の多い間食(プリン、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム等)は、食べすぎないようにする
10
重量があり、水分の多い食品(果物、缶詰、卸し大根、こんにゃく等)の食べすぎに気をつける
 
.水分を過剰時の合併症
水分をとりすぎた時の症状、体の変化
1 高血圧 1 むくみ、 元気がない、 体重増加がめだつ、血圧上昇
2 心不全 2 咳がでる、 寝ていると息苦しい(呼吸困難)
3 心膜炎 3 心胸比が50%以上になる 、胸痛
4 水中毒 4

ヘマトクリット値、血清ナトリウム値が下がる

塩分の取り方について
正常な腎臓はナトリウムを調整しています。しかし、腎不全では、ナトリウムの排泄ができにくくなり、浮腫や高血圧の原因となります。そのため、塩分は1日5〜8gに制限し心臓や血管への負担を少なくします。
 
塩分を過剰時の合併症
塩分をとりすぎた時の症状、体の変化
1
高血圧
1
口渇、 むくみ、 透析中、水が引きにくい
2
心不全
2
咳がでる、 寝ていると息苦しい(呼吸困難)
3
心膜炎
3
心胸比が50%以上になる 、胸痛
4

水分貯留

4

体重増加がめだつ、血圧上昇


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一日にとる塩分量の目安
5〜8g

 調味料の使い方
1
しょうゆは塩分が多いので、しょうゆ料理ばかりを重ねない
2
和風料理は塩分が多いので、洋風料理と上手に組み合わせる
3
煮付けは砂糖を少なくし、しょうゆの使い方を減らす
4
みそ汁は具を多くし、汁は少なくする
5
しょうゆをかけるより、ソース、ケチャップをかける
6
マヨネーズ、ドレッシングの料理を多くする
7
酢を利用する
8
下味はつけない
9
酢のものには塩は使わない
10
かけるよりつけて食べる

外食は塩分が多いので、極力さける
うどんやそばは食べても結構ですが、汁はなるべく飲まないようにしましょう。
カリウムのとり方について
正常な腎臓はカリウムを尿中に排泄し、調整しています。しかし腎不全では、尿 中に排泄されず血液中にたまります。高カリウム血症にならない食べ方が大切です。そのためにはカリウムの少ない食べ物を食べたり、ゆでてカリウムを減らす工夫をします。

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カリウム値が上がる原因
カリウム値が上がった時の症状
1
カリウムの取りすぎ
1

手指・口唇がしびれる

2
食事が食べられない時
2
だるい、胸が苦しい
3
かぜなどの炎症
3
口のこわばり、ものが言いにくい
4
透析不十分
4

意識がなくなる、 ひどくなると心臓が止まる

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検査について
 透析効率や自己管理状態をみたり、合併症の早期発見のために定期的に血液検査やレントゲン撮影、心電図などを行います。 日頃から主な検査データを読み、健康管理をしていく上で役に立てましょう。
 主な検査項目(定期検査)
血液生化学・血球算定・心電図・胸部レントゲン撮影・腹部超音波・検尿・尿量
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1
毎週水曜日に1週間分お渡しします
2
透析の時も持参して下さい
3
食後に服用されている方は、飲み忘れがないように必ず服用して下さい
4
薬が足りなかったり、わからないことがありましたら、遠慮なくお尋ね下さい
5
病院からもらった薬以外は服用しないで下さい(もし服用する場合は医師及び看護婦にお尋ね下さい)
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1
ロッカーは鍵がかかりませんので貴重品はできるだけもってこられないようにお願いします
2
私物の紛失、破損などに関しては一切の責任は持ちませんのでご了承下さい
3
出張、旅行先で透析を希望される方は、1ヵ月前までにお知らせ下さい。 適宜、透析施設を当院から紹介いたします。
4
透析室の止血バンドは、30分程度ではずし、圧迫綿は透析日の午後9時頃には、必ずはずして下さい
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